榮太樓總本鋪
株式会社榮太樓總本鋪は、江戸時代の文政元年（1818年）に創業した、東京都中央区日本橋に本社・本店を構える老舗の和菓子店です。二世紀以上にわたり、日本の菓子文化の一端を担ってきました。
同社の名前は、創業者の曾孫にあたる細田栄太郎に由来します。菓子業の礎を築いた曾祖父の細田徳兵衛が江戸・九段で「井筒屋」を開いた後、栄太郎が安政4年（1857年）に現在の日本橋西河岸の地に店舗を構えました。当初は曾祖父と同じ「井筒屋」の屋号を用いていましたが、お客様が皆「えいたろうの店」あるいは「えいちゃんの店」と呼んだため、わずか4年後には店名を「榮太樓」に改めたと伝えられています。創業年は、飯能での菓子業ではなく、細田徳兵衛が孫二人を伴って江戸に出府し、九段で菓子業を始めた1818年としています。
榮太樓の菓子業の起源はさらに古く、1700年代初頭に武州飯能で士族でありながら菓子業を始めた吉左衛門四世（後に善兵衛と改名）による煎餅焼に遡ります。この商いは息子、そして孫の徳兵衛へと継承されました。徳兵衛は妻を亡くした翌年の1818年、孫の安太郎と安五郎を連れて江戸へ。九段坂で「井筒屋」を開きました。安五郎は独立し、菓子職人として腕を磨き、「伊立屋」として一本立ち。その安五郎の長男として生まれたのが細田栄太郎です。栄太郎は幼少期から父の商いをよく手伝い、孝行息子として知られていました。19歳の時、流行り病で伯父と父を相次いで失った栄太郎は、家督を継ぎ一族を支えることになります。傾きかけた九段の店を立て直しつつ、日本橋南詰（現在の西川ビルとコレド日本橋の間）での屋台商売に注力。特に魚河岸で働く人々から甘くて栄養価の高い栄太郎の金鍔は絶大な支持を得ました。その成功を受け、安政4年（1857年）に日本橋西河岸町に実店舗を開設。この地は現在も本店・本社が置かれる場所です。明治時代に入ると、上野で開催された内国勧業博覧会や海外の万国発明品博覧会への出品を通じて知名度を全国に拡大。組織としても発展を続け、1940年に有限会社、1972年に株式会社へと改組しました。また、1981年には現代の代表商品の一つとなる「缶入りあんみつ」を発売しています。
榮太樓總本鋪は、江戸時代から伝わる伝統的な和菓子を多数製造販売しています。代表的なものとしては、本来の丸い形の「金鍔」、甘納豆のルーツとされる「甘名納糖」、そして独特の風味を持つ「梅ぼ志飴」などがあります。その他にも「玉だれ」や「楼」といった銘菓も手掛けています。また、水羊羹やあんみつ、みつ豆といった贈答用の菓子にも強く、全国の百貨店には同社の専門売場が数多く設けられています。一方で、量販店向けには飴を中心とした商品が充実しており、「黒みつ飴」や「しょうがはちみつのど飴」などが広く親しまれています。近年は、多様な世代のニーズに応えるため、コンセプト別に様々なブランドを展開しています。
金鍔: 江戸中期に京都で生まれた白い「銀鍔」が江戸に伝わり、皮が小麦になったことで黄金色になったことから「金鍔」と呼ばれました。江戸時代末期に栄太郎が日本橋の屋台で売っていた金鍔は、江戸市中で評判となり、江戸を代表する人気の菓子となりました。当時の川柳にもその人気を示す句が残されています。
榮太樓飴: 「梅ぼ志飴」「黒飴」「抹茶飴」「紅茶飴」「のど飴」の総称です。「梅ぼ志飴」は名前とは異なり梅味ではありません。米や芋を原料とする一般的な和飴ではなく、南蛮渡来の有平糖の製法で作られた砂糖飴です。歯に付かずカリカリとした食感と、砂糖の熱分解によるカラメルを主体とした複雑で奥深い風味が特徴。砂糖純度が高く、いくつ舐めても口が荒れにくいとされ、明治・大正期には上方（京都・大阪）の芸妓や舞妓がリップケアとしても用いたという逸話も残っています。「梅ぼ志飴」という名は、その形や大きさが梅干しに似ていたこと、特に切り口をつまんでできるシワが梅干しに似ていたことから、甘いにも関わらず洒落と機知を込めて名付けられたと言われています。
甘名納糖: 江戸時代に日本橋で誕生した甘納豆の元祖です。現在も榮太樓總本鋪の本店でのみ販売されています。明治10年の第一回内国勧業博覧会で優等賞を受賞した歴史ある商品です。
Ameya Eitaro: 「宝石のように美しい飴」をコンセプトにした飴の専門ブランドです。化粧品のようなパッケージデザインが特徴で、同社が培ってきた飴の技術を駆使したユニークな商品が揃います。
にほんばしえいたろう: 若い世代に和菓子を身近に感じてもらうことを目指したブランド。可愛らしい小袋入りのおやつ菓子が中心で、購入しやすい価格帯です。アトレ恵比寿にある本店では生どらやきも販売しています。
東京PEASEN: 昭和後期に東京土産として人気を博したピーセンのブランドです。もともと製造販売していた銀座江戸一の廃業後、榮太樓總本鋪がブランドを継承しました。
* からだにえいたろう: 「ヘルスケア×和菓子」をテーマにしたブランド。業界初の低糖質羊羹や、血糖値の上昇を抑えることに配慮したどら焼きなど、健康志向の商品を幅広く展開しており、ドラッグストアや調剤薬局でも販売されています。キャラクターは「えいたん」です。
本社と本店は歴史ある日本橋の地にありますが、商品の製造は八王子市にある工場で行われています。かつては調布市にも工場がありましたが、2013年に廃止されました。国内の販売網は百貨店や駅・空港だけでなく、スーパー、コンビニ、ショッピングモールなど多岐にわたり、古くからの神社仏閣ルートも維持しています。近年はオンラインストアでの販売にも力を入れています。また、大阪府と福岡県には営業所を置いています。
現在、正式なのれん分けとして認められているのは、明治18年創業の芝神明 榮太樓と明治38年創業の深川 榮太樓の二店舗のみです。全国に「えいたろう」と名のつく店舗が存在しますが、これらは基本的にのれん分けではありません。ただし、過去には榮太樓總本鋪の元社員が独立して同名で店舗を構えるケースもあったとされています。
かつてはテレビCMも放映されており、缶入りみつ豆の「はーい、えいたろうですー」というジングルや、梅ぼ志飴のCMなどが記憶されています。同社は全国和菓子協会や東都のれん会に加盟しており、また江戸時代の絵師である河鍋暁斎の「枯木寒鴉図」を所蔵していることでも知られています。
社名と創業年の由来
同社の名前は、創業者の曾孫にあたる細田栄太郎に由来します。菓子業の礎を築いた曾祖父の細田徳兵衛が江戸・九段で「井筒屋」を開いた後、栄太郎が安政4年（1857年）に現在の日本橋西河岸の地に店舗を構えました。当初は曾祖父と同じ「井筒屋」の屋号を用いていましたが、お客様が皆「えいたろうの店」あるいは「えいちゃんの店」と呼んだため、わずか4年後には店名を「榮太樓」に改めたと伝えられています。創業年は、飯能での菓子業ではなく、細田徳兵衛が孫二人を伴って江戸に出府し、九段で菓子業を始めた1818年としています。
歴史
榮太樓の菓子業の起源はさらに古く、1700年代初頭に武州飯能で士族でありながら菓子業を始めた吉左衛門四世（後に善兵衛と改名）による煎餅焼に遡ります。この商いは息子、そして孫の徳兵衛へと継承されました。徳兵衛は妻を亡くした翌年の1818年、孫の安太郎と安五郎を連れて江戸へ。九段坂で「井筒屋」を開きました。安五郎は独立し、菓子職人として腕を磨き、「伊立屋」として一本立ち。その安五郎の長男として生まれたのが細田栄太郎です。栄太郎は幼少期から父の商いをよく手伝い、孝行息子として知られていました。19歳の時、流行り病で伯父と父を相次いで失った栄太郎は、家督を継ぎ一族を支えることになります。傾きかけた九段の店を立て直しつつ、日本橋南詰（現在の西川ビルとコレド日本橋の間）での屋台商売に注力。特に魚河岸で働く人々から甘くて栄養価の高い栄太郎の金鍔は絶大な支持を得ました。その成功を受け、安政4年（1857年）に日本橋西河岸町に実店舗を開設。この地は現在も本店・本社が置かれる場所です。明治時代に入ると、上野で開催された内国勧業博覧会や海外の万国発明品博覧会への出品を通じて知名度を全国に拡大。組織としても発展を続け、1940年に有限会社、1972年に株式会社へと改組しました。また、1981年には現代の代表商品の一つとなる「缶入りあんみつ」を発売しています。
多様な商品とブランド
榮太樓總本鋪は、江戸時代から伝わる伝統的な和菓子を多数製造販売しています。代表的なものとしては、本来の丸い形の「金鍔」、甘納豆のルーツとされる「甘名納糖」、そして独特の風味を持つ「梅ぼ志飴」などがあります。その他にも「玉だれ」や「楼」といった銘菓も手掛けています。また、水羊羹やあんみつ、みつ豆といった贈答用の菓子にも強く、全国の百貨店には同社の専門売場が数多く設けられています。一方で、量販店向けには飴を中心とした商品が充実しており、「黒みつ飴」や「しょうがはちみつのど飴」などが広く親しまれています。近年は、多様な世代のニーズに応えるため、コンセプト別に様々なブランドを展開しています。
代表的な商品・ブランド
金鍔: 江戸中期に京都で生まれた白い「銀鍔」が江戸に伝わり、皮が小麦になったことで黄金色になったことから「金鍔」と呼ばれました。江戸時代末期に栄太郎が日本橋の屋台で売っていた金鍔は、江戸市中で評判となり、江戸を代表する人気の菓子となりました。当時の川柳にもその人気を示す句が残されています。
榮太樓飴: 「梅ぼ志飴」「黒飴」「抹茶飴」「紅茶飴」「のど飴」の総称です。「梅ぼ志飴」は名前とは異なり梅味ではありません。米や芋を原料とする一般的な和飴ではなく、南蛮渡来の有平糖の製法で作られた砂糖飴です。歯に付かずカリカリとした食感と、砂糖の熱分解によるカラメルを主体とした複雑で奥深い風味が特徴。砂糖純度が高く、いくつ舐めても口が荒れにくいとされ、明治・大正期には上方（京都・大阪）の芸妓や舞妓がリップケアとしても用いたという逸話も残っています。「梅ぼ志飴」という名は、その形や大きさが梅干しに似ていたこと、特に切り口をつまんでできるシワが梅干しに似ていたことから、甘いにも関わらず洒落と機知を込めて名付けられたと言われています。
甘名納糖: 江戸時代に日本橋で誕生した甘納豆の元祖です。現在も榮太樓總本鋪の本店でのみ販売されています。明治10年の第一回内国勧業博覧会で優等賞を受賞した歴史ある商品です。
Ameya Eitaro: 「宝石のように美しい飴」をコンセプトにした飴の専門ブランドです。化粧品のようなパッケージデザインが特徴で、同社が培ってきた飴の技術を駆使したユニークな商品が揃います。
にほんばしえいたろう: 若い世代に和菓子を身近に感じてもらうことを目指したブランド。可愛らしい小袋入りのおやつ菓子が中心で、購入しやすい価格帯です。アトレ恵比寿にある本店では生どらやきも販売しています。
東京PEASEN: 昭和後期に東京土産として人気を博したピーセンのブランドです。もともと製造販売していた銀座江戸一の廃業後、榮太樓總本鋪がブランドを継承しました。
* からだにえいたろう: 「ヘルスケア×和菓子」をテーマにしたブランド。業界初の低糖質羊羹や、血糖値の上昇を抑えることに配慮したどら焼きなど、健康志向の商品を幅広く展開しており、ドラッグストアや調剤薬局でも販売されています。キャラクターは「えいたん」です。
事業拠点と販売網
本社と本店は歴史ある日本橋の地にありますが、商品の製造は八王子市にある工場で行われています。かつては調布市にも工場がありましたが、2013年に廃止されました。国内の販売網は百貨店や駅・空港だけでなく、スーパー、コンビニ、ショッピングモールなど多岐にわたり、古くからの神社仏閣ルートも維持しています。近年はオンラインストアでの販売にも力を入れています。また、大阪府と福岡県には営業所を置いています。
のれん分け
現在、正式なのれん分けとして認められているのは、明治18年創業の芝神明 榮太樓と明治38年創業の深川 榮太樓の二店舗のみです。全国に「えいたろう」と名のつく店舗が存在しますが、これらは基本的にのれん分けではありません。ただし、過去には榮太樓總本鋪の元社員が独立して同名で店舗を構えるケースもあったとされています。
その他の情報
かつてはテレビCMも放映されており、缶入りみつ豆の「はーい、えいたろうですー」というジングルや、梅ぼ志飴のCMなどが記憶されています。同社は全国和菓子協会や東都のれん会に加盟しており、また江戸時代の絵師である河鍋暁斎の「枯木寒鴉図」を所蔵していることでも知られています。
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