止血帯

止血帯（ターニケット）とは

止血帯（ターニケット）は、四肢からの出血を止めるために使用される医療器具です。バンドで四肢を締め付け、血流を遮断することで止血を図ります。緊急時には命を救う重要なツールですが、使用には細心の注意が必要です。

止血帯の歴史

止血帯の歴史は古く、紀元前4世紀のアレクサンドロス大王の時代にはすでに使われていました。ローマ時代には、革と青銅製のストラップが止血に使用されていました。

18世紀には、フランスの外科医ジャン・ルイ・プティが、ネジ巻き式の止血帯を開発しました。19世紀には、フリードリヒ・フォン・エスマルヒがゴム製の駆血帯を発表し、これはエスマルヒ駆血帯として知られています。20世紀には、空気圧式の止血帯が開発され、より安全で効果的な止血が可能になりました。

21世紀に入り、軍事・民間両方で止血帯の重要性が再認識され、普及が進んでいます。

止血帯の用途

止血帯は、以下のような様々な状況で使用されます。

応急処置

外傷による大量出血、特に動脈性の出血に対して、止血帯は重要な役割を果たします。直接圧迫止血法で止血できない場合に、傷口より中枢側を強く縛り、血流を遮断します。ただし、止血帯の使用にはリスクが伴うため、専門的な知識と訓練が必要です。

応急処置における注意点

止血帯は、傷口から5-7cm程度中枢側（心臓に近い側）に巻きます。
最初の止血帯で止血できない場合は、2本目を並べて使用します。
出血が止まるまで、または末梢の脈拍が消失するまで、強く締め付けます。
止血帯の使用は、コンパートメント症候群、神経損傷、血管断裂などの合併症のリスクを高めます。
止血帯を使用する際は、止血時間と部位を記録する必要があります。

手術

整形外科手術など、出血量を抑えたい場合に使用されます。この場合は、空気圧式で圧力を細かく調整できるものが使われます。駆血時間を管理するためのタイマーが内蔵されているものもあります。

静脈注射・採血

静脈を怒張させて血管を見やすくするために、駆血帯（止血帯の一種）が使用されます。止血帯ほど強い力で締め付ける必要はありません。

その他

ボディビルダーが加圧トレーニングを行う際に、血流を制限するために使用されることがあります。

止血帯使用時のリスクと注意点

止血帯の使用は、以下のようなリスクを伴います。

コンパートメント症候群: 筋肉への血流が遮断され、筋肉や神経が損傷する可能性があります。
血管損傷: 血管が圧迫され、損傷する可能性があります。
神経損傷: 神経が圧迫され、麻痺や感覚障害が残る可能性があります。
肢切断: 重大な合併症が生じた場合、止血帯を巻いた部分の切断が必要になることがあります。

これらのリスクを避けるため、止血帯は専門的な訓練を受けた人が使用し、使用時間を最小限に抑える必要があります。また、止血帯の使用状況を記録し、医療機関に引き継ぐことが重要です。

近年の止血帯の動向

近年では、止血帯の有用性が再評価され、軍隊だけでなく民間でも普及が進んでいます。救急隊への配備が進み、一般市民向けのトレーニングも行われるようになっています。また、シリコンリング止血帯など、新しいタイプの止血帯も開発されています。

まとめ

止血帯は、大量出血を止めるための有効な手段ですが、使い方を誤ると重大な合併症を引き起こす可能性があります。適切な知識と訓練を受け、緊急時のみ使用するようにしましょう。止血帯に関する情報を正しく理解し、安全に利用することが大切です。

参考資料

日本赤十字社「多量の出血－止血法－」
* 総務省消防庁「テロ災害等の対応力向上としての止血に関する教育テキスト」

もう一度検索