武雄市図書館・歴史資料館

武雄市図書館・歴史資料館：革新的な図書館運営の光と影

佐賀県武雄市に位置する武雄市図書館・歴史資料館は、図書館と歴史資料館が複合した施設です。2000年10月1日に開館し、市民の知的欲求を満たす場として親しまれてきました。2013年からはカルチュア・コンビニエンス・クラブ（CCC）が指定管理者となり、従来の図書館のイメージを覆す運営方法が導入され、全国的に注目を集めています。

施設の構成

武雄市図書館・歴史資料館は、以下の施設で構成されています。

図書館
本館
こども図書館
歴史資料館
蘭学・企画展示室
特別収蔵庫
一般収蔵庫

特徴的な運営

CCCが指定管理者となって以降、武雄市図書館は以下のような点で大きく変化しました。

開館時間の延長と年中無休：9時から21時まで開館し、休館日をなくすことで、利用者の利便性を向上。
Tカードの導入：貸出カードとしてTカードを導入し、Tポイントを付与することで、若年層の利用を促進。
スターバックスの併設：館内にスターバックスを併設し、コーヒーを飲みながら本を読める空間を提供。
蔦屋書店の設置：書籍や雑誌の販売を行う蔦屋書店を館内に設置。

これらの改革は、図書館の利用者を増加させ、新たな価値を創造することに貢献しました。しかし、その一方で、以下のような問題点も指摘されています。

個人情報の取り扱い：Tカードの導入により、個人の貸出履歴がCCCに収集されることへの懸念。
地域資料の廃棄：リニューアルの際に、地域資料や郷土史資料が大量に廃棄されたことへの批判。
選書の問題：購入された蔵書の中に、時代遅れのものや実用性に欠けるものが含まれていることへの疑問。
図書館の公共性：営利企業であるCCCが運営することで、図書館の公共性が損なわれるのではないかという懸念。

歴史

武雄市の図書館の歴史は古く、1916年に杵島郡教育会が設立した私立杵島図書館に遡ります。その後、武雄町立武雄図書館、武雄市立図書館と名称を変え、市民の学習を支えてきました。2000年には現在の武雄市図書館・歴史資料館が開館し、2013年のCCCによる運営開始を経て、新たな時代を迎えています。

武雄市こども図書館

2017年10月には、武雄市こども図書館が開館しました。子どもたちが本に親しむための様々な工夫が凝らされており、九州パンケーキカフェも併設されています。

論争と住民訴訟

CCCによる運営は、図書館のあり方をめぐる議論を呼び起こしました。日本図書館協会や図書館問題研究会などの団体が懸念を表明し、住民からはCCCの運営方法に対する批判や住民訴訟も起こされました。しかし2019年4月19日、福岡高裁は控訴を棄却しています。

現在の状況

武雄市図書館・歴史資料館は、現在もCCCによって運営されています。その革新的な運営方法は、図書館界に大きな影響を与え続けており、全国各地で同様の試みがなされています。しかし、その一方で、図書館の公共性や地域資料の保存など、解決すべき課題も残されています。

関連書籍

樋渡啓祐『沸騰! 図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ』KADOKAWA/角川書店、2014年5月8日。ISBN 9784041018163
* 『ず・ぼん』特集「武雄市図書館をたずねて」19号、ポット出版。ISBN 9784780802054

まとめ

武雄市図書館・歴史資料館は、CCCによる運営によって、多くの利用者を獲得し、図書館の可能性を広げました。しかし、その過程で、図書館の公共性や地域資料の保存といった重要な課題も浮き彫りになりました。武雄市図書館の事例は、今後の図書館のあり方を考える上で、貴重な示唆を与えてくれるでしょう。

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