殺陣

殺陣についての詳細

殺陣の定義と起源

殺陣（たて）は、演劇や映画、テレビドラマで俳優が行う格闘シーンの演技形式です。武器や素手を用いて展開されるこの演技は、時代劇や現代劇において重要な要素とされています。この技術は「演陣」、「技斗」、「擬斗」などと呼ばれることもあり、特に時代劇では「殺陣」が一般的です。

「殺陣」という言葉は、新国劇の座長であった沢田正二郎の冗談から生まれたとされています。彼が「殺人」という名称を考えた際、作家の行友李風が穏やかでない言葉だとして「陣」という字を提案し、その結果「殺陣」となりました。初演は1921年で、当初は「さつじん」と読まれており、1936年からは「たて」とも呼ばれるようになりました。

「技斗」は、日活撮影所の殺陣師である高瀬将敏によって作られたもので、現代劇の格闘振り付けの名称として用いられています。これは、先人への敬意から生まれた名称であり、1954年の映画で初めてクレジットに登場しました。

歴史の変遷

殺陣の歴史は、草創期、展開期、定型化期、ポスト黒澤期の5つの時代に分けられます。

- 草創期（1896年〜1920年代前半）:

日本に映画が導入された時期で、初期の時代劇映画は歌舞伎の舞台を模倣したものでした。そして尾上松之助が歌舞伎から離れた演技スタイルを取り入れ、多くの観客を魅了しました。

- 展開期（1920年代〜1945年）:

この時期には、真剣を使わないスピード感あふれる新国劇の殺陣やアクロバティックな外国映画の影響を受け、殺陣は多様なスタイルへと進化しました。

- 定型化期（1950年代）:

東映時代劇が全盛を迎え、歌舞伎的な舞踊が融合した殺陣が主流となりました。この流れを変えるのが黒澤明で、リアリティのある殺陣を生み出しました。

- ポスト黒澤期（1962年以降）:

黒澤の革新した殺陣のスタイルが引き継がれ、アクションの表現がさらに進化しました。

演技のスタイルと役割

殺陣は、一般的には刀などの武器を使うアクションであり、技斗は素手による格闘が中心です。日本の伝統芸能としての殺陣は、その本質を保つために、正しい指導や育成が求められます。

俳優と殺陣師はこの技術を継承し、演出の一環として仕上げていく役割を持っています。殺陣師は俳優に技術を指導し、アクション監督はカメラアングルや演出に関する権限を持つ重要な職種です。ハリウッドでは「アクションスーパーバイザー」という役職名が用いられています。

また、殺陣にはさまざまな小道具が用いられ、安全かつリアリティを重視した演技が求められます。日本刀の模擬刀や柔らかい素材を使用することで、俳優の安全が確保されているのです。

安全対策と教育

1989年の映画『座頭市』での悲しい事故を背景に、日本のアクション業界では安全対策が重視され始めました。これにより、「アクションライセンス制度」が設立され、俳優の殺陣技術向上が促されました。

現代の映画制作では、CG技術の進化により、役者と殺陣のスタイルが変化しています。それでも、実際に俳優自身が鍛錬し続ける姿勢が、伝統を守り続けるために重要であると、多くの関係者が考えています。

このように、殺陣は日本の文化における重要なアート形式であり、その技術と歴史は今後も引き継がれていくでしょう。

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