行友李風

行友李風（ゆきとも りふう）

行友李風は、明治10年（1877年）に広島県尾道市で生まれた劇作家、小説家です。本名を直次郎といい、大正から昭和にかけて、大衆演劇の世界でその名を轟かせました。

生涯

藍商を営む裕福な家に生まれましたが、学歴は小学校卒業にとどまります。明治39年（1906年）に大阪新報社に入社し、社会部記者として演芸欄を担当しました。大正5年（1916年）に退社後、大阪松竹合名会社（松竹）文芸部を経て、田村木国らと洗堰吟社を設立するなど、文筆活動を本格化させます。

新国劇との出会い

大正6年（1917年）、沢田正二郎が新国劇を結成すると、行友は松竹からの派遣という形で座付き作者となります。大正8年（1919年）には、『金山颪』『春告鳥』などを発表し、その後『月形半平太』『國定忠治』という二つの大ヒット作を生み出しました。

『月形半平太』と『國定忠治』

『月形半平太』は、福岡藩士・月形洗蔵と土佐藩士・武市半平太をモデルにしたオリジナル作品で、「春雨じゃ、濡れて行こう」などの名台詞とともに、新国劇の看板演目となりました。幕末維新期を舞台にした最初の作品とも言われ、それまでになかった時代設定と、主人公のキャラクター、そして沢田正二郎によるスピーディな殺陣が組み合わさり、大衆を魅了しました。

同じく大正8年（1919年）に初演された『國定忠治』は、講談や浪曲で親しまれていた忠治を題材に、行友が新たな解釈を加えました。「赤城の山も今夜を限り」の名台詞で知られる赤城天神山の場面は、沢田の演出も相まって、新国劇の代表的な演目となり、劇団の人気を不動のものとしました。

小説家としての成功

大正14年（1925年）から大阪・東京朝日新聞で連載された小説『修羅八荒』は、伝奇小説として人気を博し、行友は人気作家としての地位を確立しました。連載中から映画化、ラジオドラマ化、レコード化などが行われ、今日のメディアミックスの先駆けとも言えます。

その後

昭和4年（1929年）に沢田正二郎が死去すると、新国劇は島田正吾・辰巳柳太郎を後継者として立て直しますが、行友は息子を亡くすなど不幸が重なり、次第に劇団から距離を置くようになります。晩年は小説に専念し、ひっそりと暮らしました。昭和34年（1959年）に亡くなった際、その功績を知る人は少なくなっていたといいます。

新国劇は昭和59年（1984年）に解散しましたが、行友の代表作である『國定忠治』は、解散直前まで上演され続けました。

主な作品

戯曲

金山颪
春告鳥
月形半平太
国定忠治
はやぶさ大名
千葉周作

小説

北海熊
修羅八荒
破軍星
安政辻占曽我
* 獄門首土蔵

行友李風は、大衆演劇の隆盛に大きく貢献した劇作家であり、小説家でした。彼の作品は、時代を超えて愛され続けています。

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