津軽義孝

津軽義孝：華族から競馬界の重鎮へ、そして皇族の姻戚へ

津軽義孝（つがる よしたか、1907年12月18日 - 1994年8月22日）は、日本の華族であり、馬事関係者として、そして正仁親王妃華子の父として知られる人物です。旧弘前藩津軽家第14代当主、伯爵の身分を継承し、華麗な一族の歴史を背負いながら、独自の道を歩みました。

華族としての生い立ちと家督相続

1907年、尾張徳川家分家の男爵徳川義恕の次男として東京で誕生しました。母親は津軽家12代当主の娘であったことから、津軽家との繋がりを持っていました。13代当主の津軽英麿に後継がいなかったため、1919年、津軽家へ養子として迎え入れられます。そして、英麿の薨去後、14代当主として家督を継承し、伯爵位を襲爵しました。彼の兄弟姉妹もまた、皇室や政府に深く関わっており、姉は皇族妃、兄は昭和天皇の侍従として長く仕えました。こうした環境が、津軽義孝の生涯に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

馬への情熱と競馬界への貢献

幼少期から馬に親しみ、旧制学習院高等科を経て東北帝国大学理学部を中退。その後、日本競馬会に奉職し、宮内省下総御料牧場で競走馬の育成に携わりました。第二次世界大戦後、競馬共助会監事として、日本の競馬復興に尽力。特に、オーストラリアやニュージーランド産の競走馬の輸入に尽力し、17頭の競走馬と7頭の妊娠牝馬を輸入するなど、その手腕は高く評価されました。

1953年には、東京競馬場の調教師である尾形藤吉と共にアメリカへ渡航し、現地競馬事情を視察。これらの経験は、日本の競馬界の近代化に大きく貢献しました。1955年から1965年まで、日本中央競馬会（JRA）馬事公苑苑長を務め、騎手育成や東京オリンピックの馬術競技会場準備にも携わりました。さらに、一般の人々が馬に親しめる環境づくりにも積極的に取り組み、ポニーの繋養や乗馬の普及にも尽力しました。1956年のメルボルンオリンピックでは、近代五種競技連合の視察員として参加し、貴重な報告書を残しています。

多様な活動と晩年

JRA監事、馬事文化財団理事長、馬の博物館館長などを歴任し、日本の馬文化の発展に貢献しました。さらに、1989年から1994年まで日本博物館協会会長を務め、幅広い分野で活躍しました。1994年8月22日、心不全のため86歳で死去。

家族

彼の家族もまた、日本の社会に多大な貢献を果たしました。妻の久子は子爵毛利元雄の長女、長女は西田幾久彦（西田幾多郎の孫）の妻、四女は常陸宮正仁親王の妃華子と、皇室との結びつきも深く、その影響力は計り知れません。

津軽義孝の生涯は、華族としての生い立ち、競馬界への多大な貢献、そして皇室との繋がりなど、多くの側面から日本の近代史を紐解く上で重要な足跡を残しています。彼の功績は、現代においても日本の競馬界や馬文化に大きな影響を与え続けています。

もう一度検索