流し

流しとは

流し（ながし）とは、ギターやアコーディオンなどの楽器を携え、酒場や飲食店を巡りながら客からのリクエストに応じてその伴奏を行ったり、自ら歌を披露する人々のことを指します。このような音楽パフォーマンスは、特に日本の昭和時代に広く行われていました。流しは、その場の雰囲気を盛り上げる役割を果たし、時には訪れる客と一緒に歌うことによって、親密さを生み出します。

流しの歴史

流しの起源は昭和初期にまで遡ります。当初は演歌を中心に歌う演歌師として、地方の祭りや屋台などで活動していました。演歌師たちは街頭やイベントにおいて、各地を渡り歩きながらその歌声を響かせていました。しかし、カフェなどで演奏するスタイルに切り替えることで、次第に「流し」という名称が定着していったのです。また、流しのスタイルは多様であり、その中には使用する楽器やレパートリーの数も多く含まれています。

流しの特徴

流しは、ギターやアコーディオン、ウクレレ、さらには三味線など様々な楽器を用いることがあります。彼らは歌詞本を持っており、客の希望に応じて演奏を行います。1970年代前半までは、カラオケが一般に普及していなかったため、流しの需要は高く、新宿などの繁華街には多くの流しが存在していました。彼らは生演奏という特性を持ち、カラオケとは異なり、客の歌にリズムや音程を合わせることができるため、音痴の方でも気軽に楽しむことができるという特徴があります。

流しのレパートリー

流しが取り扱う曲目は演歌だけに限らず、軍歌やフォークソング、歌謡曲や洋楽、さらにはJ-POPまで多岐にわたります。そのため、流しはその場の客層に応じた幅広いレパートリーを持ち、市場のニーズに応えています。特に、常連客が多い場合は懐かしいメロディや昔のヒット曲が中心になることがほとんどです。

流し出身の著名歌手

流しと聞いて思い浮かぶ有名な歌手には、演歌歌手の北島三郎や五木ひろし、渥美二郎などがいます。彼らはいずれも流しからプロの歌手へと転身した例です。流し出身のアーティストの中には、歌手業だけでなく作曲家としても活躍する人々が多く、おかゆや和泉容（Be-B）などがその一例です。また、流しをすることで生計を立てている現役の歌手も存在し、流し文化は現代においても継承されています。

流しの存在は、日本の音楽文化において特異な位置を占めており、移動することで観客とのインタラクションを楽しむパフォーマンススタイルが特徴です。彼らのプレイは、楽器の音色と温かみのある歌声で、飲み屋の中で独特な雰囲気を作り出しています。流しは、単なる演奏者ではなく、観客との距離を縮め、共に楽しむことを目的とした重要な役割を果たしています。

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