準安定状態

準安定状態とは

準安定状態（メタステーブル状態）とは、真の安定状態ではないにも関わらず、外部から大きな乱れが加えられない限り、あたかも安定しているかのように存在できる状態を指します。この状態は、小さな擾乱に対しては安定を保ちますが、ある程度の大きさを持つ擾乱が加わると、より安定な状態へと変化します。

準安定状態の特徴

非平衡状態: 準安定状態は平衡状態ではなく、時間経過とともに真の安定状態へと移行する性質があります。しかし、この変化には非常に長い時間を要する場合があります。
エネルギー極小値: 準安定状態は「自由エネルギーが極小値をとる状態」と表現されることが多いですが、これはあくまでイメージであり、平衡熱力学では厳密に扱うことができない概念です。平衡熱力学では平衡状態のみを扱うため、準安定状態は理論的に予測できません。
複数の存在: 準安定状態は一つだけでなく、複数存在することがあります。これらの準安定状態の間、あるいは準安定状態と最安定状態の間には、エネルギー障壁が存在します。この障壁の高さは状態によって異なり、高い場合もあれば低い場合もあります。外部からの駆動力（熱など）によって障壁を乗り越えることで、より安定な状態へと変化します。

準安定状態の例

準安定状態の例として、以下のようなものが挙げられます。

過冷却状態: 液体の温度を凝固点以下に下げても、凝固せずに液体の状態を保っている状態。
過飽和状態: 溶媒に溶質が溶けきれない量を超えて溶けている状態。
ガラス状態: 液体を急激に冷却した際に、結晶化せずに固体化した状態。物質が非晶質構造を維持したまま固体化した状態です。
常温・常圧におけるダイヤモンド: 炭素の安定な形態はグラファイトですが、ダイヤモンドも準安定状態として存在できます。
アナターゼ型の二酸化チタン: 二酸化チタンには複数の結晶構造が存在しますが、アナターゼ型もその一つです。

準安定状態の理解を深めるために

準安定状態を理解するには、エネルギー障壁の概念が重要です。準安定状態は、エネルギー的に「一時的な谷」に位置しており、その谷から抜け出すには、一定以上のエネルギーが必要となります。このエネルギー障壁の高さが、準安定状態の寿命や安定性を決定づける重要な要素となります。

参考文献

田崎晴明 『熱力学 — 現代的な視点から 』 培風館（新物理学シリーズ 32）、2000年。ISBN 4563024325

関連項目

非平衡状態
鞍点
化学
原子核[[物理学]]
物理学
統計力学
物性[[物理学]]
* 偽の真空

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