炭素鋼

炭素鋼について

炭素鋼は、鉄と炭素の合金からなる鋼の一つであり、その名の通り炭素の含有比率が重要な役割を果たします。この材料は、鉄鋼の中でも特に安価で加工しやすいため、広く用いられています。炭素鋼は炭素含有量により、性能や用途が異なります。

組成と性質

炭素鋼は基本的に、質量パーセントで0.02%から2.14%の範囲で炭素を含有しており、炭素以外の元素としては珪素、マンガン、リン、硫黄が含まれます。これらの元素は意図的に添加されたものではなく、製造過程で自然に残るものです。炭素が含まれる量が多くなるにつれ、引っ張り強さや硬さは向上しますが、その反面、伸びや絞り、また加工性が悪化することが一般的です。

熱処理によって炭素鋼の性質は大きく変化します。代表的な熱処理法には、焼なまし（柔らかくする）、焼ならし（表面の応力を解放する）、焼入れ（硬化させる）、焼戻し（硬さを調整する）などがあります。これにより、特定の用途や必要な強度に応じた性質を持つ炭素鋼を得ることが可能です。

分類

炭素鋼は、炭素の含有量によって3つに分類されます。炭素含有率が0.25%以下のものは「低炭素鋼」、0.25%から0.6%のものが「中炭素鋼」、0.6%以上のものは「高炭素鋼」と呼ばれています。特に低炭素鋼と中炭素鋼はその特性から、工業界で頻繁に使用されています。また、0.6%以下の炭素鋼は、「普通鋼」とも称されることがあります。

日本では、0.6%以下の炭素鋼は主に構造用鋼として利用され、0.6%以上のものは工具鋼としての用途があります。構造用鋼は一般構造用と機械構造用に区分され、それぞれの使用法に応じた日本工業規格（JIS）によっても要件が設定されています。

さらに炭素鋼の硬さに応じた分類もあり、一般的に「軟鋼」や「硬鋼」といった名称で呼ばれます。具体的には、特別極軟鋼、極軟鋼、軟鋼、半軟鋼、半硬鋼、硬鋼、極硬鋼、最硬鋼といった形で、柔らかいものから順に分類されます。しかし、これらの名称に関しては厳密な定義がないため、文献によってもさまざまに異なることがあります。例えば、軟鋼（通常0.18 - 0.30%）、硬鋼（約0.40 - 1.00%）といった具合です。

まとめ

炭素鋼はその持つ特性から、さまざまな産業で用いられる重要な材料です。熱処理や組成により異なる性質を持つため、用途に応じた選択が可能で、多様な要求に応じて様々な製品が作られています。例としては、高炭素鋼を使用したピアノ線や、鉄道用レールとしての利用が挙げられます。

もう一度検索