物干し

物干し

物干し（ものほし）とは、洗濯物などを屋外で自然の力、すなわち太陽光や風を利用して乾かすために用いられる道具や設備全般を指します。私たちの日常生活において、衣類や寝具などを清潔に保つ上で欠かせない役割を果たしています。物干しには様々な種類があり、代表的なものには、棒状の「物干しざお」、紐状の「物干しロープ」、そして様々な形状の「物干し器」などがあります。

物干しざお

物干しざお（ものほしざお、物干し竿）は、洗濯物を掛けて干すために特化された、最も一般的な物干し器具です。かつては主に竹で作られていたことから「さおだけ（竿竹）」とも呼ばれますが、これは竹を素材としていた時代からの呼び名が今に残っているものです。

用途と干し方

物干しざおには、ハンガーに吊るしたシャツやズボンなどの衣類を掛けたり、またタオルやシーツ、布団カバーのような大きな布類はそのまま竿にかぶせるようにして干したりします。シャツ類は、両袖口や肩口を通して竿にかけると、形崩れしにくく乾きやすくなります。竿やそれを支える台がしっかりと丈夫であれば、重みのある布団や毛布などを干すことも可能です。洗濯物だけでなく、干し柿や乾物などの食品を吊るして乾燥させる用途にも使われることがあります。屋外に設置するため、風が強い日には干しているものが飛ばされないように、洗濯ばさみでしっかりと固定しておくことがおすすめです。

形状と設置

物干しざお本体は、長さが2メートルから4メートル程度、太さが3センチメートルから4センチメートルほどの真っ直ぐな棒状をしています。内部は空洞で、パイプのような構造です。前述の通り、かつては竹製が主流でしたが、現在では鉄、ステンレス鋼、アルミニウムといった金属素材が多く使われています。

設置方法には、地面や床に立てる独立した台（物干し台）に渡して固定する「自立型」と、建物の壁や柱、ベランダなどに設けられたフックや金具に渡して固定する「取り付け型」があります。特にマンションなどの集合住宅では、ベランダやバルコニーに竿を掛けるためのフックが備え付けられている取り付け型が一般的です。いずれのタイプも、多くの場合、地上から約2メートルの高さに設置されます。この高さは、洗濯物が地面について汚れるのを防ぎつつ、干したり取り込んだりする作業がしやすいように考慮されたものです。設置位置が低すぎたり高すぎたりすると、使い勝手が悪くなります。

主に庭やベランダといった屋外空間に常設されるため、雨や風、紫外線といった自然環境に常にさらされます。このため、竿や物干し台は錆びやすく、素材の劣化による強度の低下に注意が必要です。近年では、錆びにくいとされるステンレス鋼と鉄を組み合わせた「クラッド管」も多く流通していますが、鉄が露出した部分などから錆が発生しやすい性質を持つものもあるため、購入時には素材や品質をよく確認することが大切です。

物干しざおカバー

物干しざおカバーは、物干しざおの表面を保護するために使用される塩化ビニル樹脂製のチューブです。熱を加えると収縮する性質（熱収縮チューブ）を利用しており、竿にかぶせた後、熱湯などで熱を加えるとチューブが収縮し、竿にぴったりと密着します。これにより、特に鉄製の竿の錆びを防いだり、古くなって傷みが目立つ竿の表面を覆って補修したり、強度を高めたりすることができます。三菱樹脂製の「ヒシチューブ」などが有名です。

さおだけ屋とその注意点

さおだけ屋（竿竹屋）は、物干しざおを専門に販売する業者を指します。日本では日中に、たくさんの物干しざおを積んだ軽トラックなどが住宅街を巡回しながら販売する姿がよく見られます。「たけやー、さおだけー」といった独特の節回しで、その存在を知らせながら歩くのが特徴です。

ただし、さおだけ屋からの購入には注意が必要です。これは、買い手が移動中の業者を呼び止めて購入するという形式のため、「訪問販売」とはみなされず、特定商取引法に基づくクーリングオフ制度（契約から一定期間内であれば無条件で契約解除できる制度）が適用されません。そのため、一度購入してしまうと、後からの返品やキャンセルが難しくなる場合があります。

国民生活センターからも注意喚起が出ており、安易に呼び止めないこと、必ず価格を事前に確認すること、そして必要なければはっきりと断ることが呼びかけられています。残念ながら、巡回している業者が信頼できる正規の業者か、あるいは不当に高額な料金を請求するような悪質な業者かを見分けるのは非常に難しいのが現状です。そのため、物干しざおが必要になった際は、金物店、大型スーパー、ホームセンターなどの実店舗で購入するのが最も安全で確実な方法と言えます。大きな物干しざおや物干し台は乗用車に載せにくいことがありますが、一部のホームセンターでは、こうした長い物や重い物を運ぶために、一定時間無料で軽トラックの貸し出しサービスを行っている店舗もあります。自分で運転できない場合は、有料になることもありますが、配送サービスを利用することも可能です。近年普及している伸縮タイプの物干しざおであれば、コンパクトにして持ち帰ることも容易です。

物干し器

物干し器は、洗濯物を直接、あるいはピンチ（洗濯ばさみ）を介して掛けて干せるように作られた、様々な形状を持つ器具全般を指します。物干しざおのように長い竿を渡すスペースがない場合や、特定の用途に適したものが多数あります。

物干し器の種類

物干し器には様々なタイプがあります。

自立型: 床や地面に直接置いて使うタイプで、「物干しスタンド」とも呼ばれます。一本の柱で支えるもの、二本の柱で支えるもの、脚部がX字型に交差しているものなど、設置場所に合わせて選べる形状があります。
取り付け型: 建物の壁や柱などに固定して使うタイプです。
吊り下げ型: 天井などから吊り下げて使用するタイプです。
放射竿型: 中心から複数の短い竿が放射状に伸びる形状で、傘の骨のような見た目をしています。
上衣用ハンガー型: シャツやブラウスなどの上衣を干すのに適した、衣類用のハンガーが複数連なった形状をしています。
ピンチハンガー: 四角形や丸形の枠に多数のピンチ（洗濯ばさみ）が付いたタイプで、靴下や下着、小物などをまとめて干すのに非常に便利です。

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