甲南小学校

兵庫県神戸市東灘区住吉本町に位置する私立小学校です。明治時代後期にあたる1912年、当時の住吉村に在住していた財界人たちの手によって創立されました。学校法人甲南学園甲南小学校が運営しており、隣接する甲南幼稚園とは同じ法人ですが、甲南大学などを運営する学校法人甲南学園や、甲南女子大学などを運営する学校法人甲南女子学園とは別法人となっています。

創立の経緯と歴史

「日本一の富豪村」と称された住吉村には、多くの実業家や資産家が暮らしていました。彼らの間で、未来を担う子どもたちのための教育機関設立構想が持ち上がったのは1910年のことです。平生釟三郎氏を中心に、田辺貞吉氏、才賀藤吉氏、阿部元太郎氏、小林山郷氏ら11人の実業家が発起人となり、計画は具体化しました。1911年 9月10日に甲南幼稚園、翌1912年 4月7日には甲南尋常小学校として開校に至ります。

創立当初は財政的な困難に直面しましたが、創立者の一人である平生釟三郎氏が、設立に携わった実業家たちに加え、久原房之助氏や進藤嘉三郎氏など、新たな支援者からの協力を仰ぎ、学校経営を立て直すことに成功しました。学校は順調に発展を遂げますが、1938年には阪神大水害に見舞われ、校舎が泥水に埋没するという甚大な被害を受けました。この災害では、避難が遅れた児童が犠牲となる悲劇も経験しています。

戦後、学制改革を経て1948年に甲南小学校と改称。1951年には財団法人から学校法人へと組織変更を行い、現在の学校法人甲南学園甲南小学校となりました。その後も教育環境の整備を進め、1966年には全ての学年が2クラス編成となりました。

教育理念と特色ある学び

甲南小学校は、幼稚園との連携による一貫教育を重視しています。「徳・体・知」の三位一体となった調和的な成長を目指し、時代の変化にしなやかに対応できる教育の実践を掲げています。理想とする子ども像は、他者を思いやる心を持ち、困難に立ち向かう強い意志を持ち、そして自ら考え探究する力を備えた児童です。

その実現のために、多岐にわたる特色ある教育プログラムを展開しています。

体験学習の重視: 年間8回にも及ぶ遠足を実施し、自然との触れ合いや社会体験を通して豊かな感性を育みます。
国際理解教育: オーストラリアの2校と姉妹校協定を結び、活発な交流を行っています。また、イギリスのケンブリッジ大学生との交流機会も設け、国際的な視野を広げます。英会話の授業は15人程度の少人数クラスで行われます。
伝統文化の継承: 日本文化を学ぶ機会を設け、自国の文化への理解を深めます。
先進的な学び: 1年生からの情報教育により、現代社会に対応できるICTスキルを育成します。算数では、2人体制での指導を取り入れ、きめ細やかなサポートを実現しています。
* 世代間交流: 幼稚園児から甲南学園の大学院生までが交流する機会を設け、多様な価値観に触れる学びを提供しています。

学校生活と進路

児童は様々な委員会活動（運営、園芸、体育、保健、図書、ベルマーク、美化、放送、国際交流、食育）に参加し、学校運営の一端を担います。また、体育的クラブ活動（卓球、バドミントン、ダンス、ソフトボール、サッカー、ミニバスケットボール、陸上）や文化的クラブ活動（科学、パソコン、鉄道、囲碁・将棋、英語ゲーム、調理・手芸、書道、演劇、和太鼓）を通して、興味関心や特技を伸ばす機会を得ています。

昼食には、利便性の高いお弁当のケータリングシステムが導入されています。

甲南小学校の卒業生の多くは、校内に設けられた推薦制度を利用して、甲南中学校または甲南女子中学校へ進学します。これは、本校が甲南学園グループの一員として、中等教育以降への円滑な接続を重視していることの表れと言えるでしょう。

学校へのアクセスは、JR神戸線または神戸新交通六甲アイランド線の住吉駅から徒歩約5分と、良好な立地です。

著名な卒業生

甲南小学校からは、洋画家の長谷川三郎氏、作曲家・指揮者の貴志康一氏、物理学者の伊藤順吉氏、実業家の松岡功氏（元東宝会長）、武田國男氏（武田薬品工業会長）、水野正人氏（元ミズノ会長）、稲畑廣太郎氏（俳人）、F1レーサーのヒロ松下氏など、多様な分野で活躍する多くの著名な人材が巣立っています。

歴史と伝統を重んじつつ、時代の変化に対応する先進的な教育を取り入れ、国際的な視野を持つ人材育成を目指す甲南小学校は、神戸を代表する私立小学校の一つとして、確固たる地位を築いています。

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