畔倉重四郎

畔倉重四郎：悪の華と大岡越前の知略が織りなす講談絵巻

『大岡政談』の中でも屈指の人気を誇る連続物の演目、『畔倉重四郎』。欲望のままに殺戮を繰り返す主人公と、彼を取り巻く様々な人物、そして彼を裁く大岡越前守の知略が絡み合う、手に汗握る物語です。 本稿では、その詳細なあらすじと、物語に込められた魅力を解説します。

物語の構成とあらすじ

尾佐竹猛の『大岡政談』では23話構成ですが、3代目神田松鯉は現代風に再構成し19話として上演しています。重四郎の悪行は、日光街道幸手中宿での喧嘩に端を発します。父・重右衛門の死後、博打に溺れた重四郎は、恩人である穀屋平兵衛を殺害、その罪を杉戸屋富右衛門に擦り付けます。

この冤罪は、富右衛門の盲目の息子・城富の嘆願によって、大岡越前が再捜査に乗り出すきっかけとなります。城富の執念深い追及と、大岡越前の鋭い洞察力は、重四郎の悪事を徐々に暴いていきます。

物語は、重四郎の連続殺人を軸に展開していきます。博打仲間の火の玉の三五郎、金兵衛、さらに栗橋の焼き場での殺人も含め、重四郎は次々と人命を奪っていきます。一方、大岡越前は、重四郎の悪事を暴くために城富と協力し、様々な策略を巡らせます。

重四郎は、神奈川宿の旅籠屋の大黒屋を乗っ取り、新たな生活を始めるも、その悪行は止まりません。三五郎を殺害し、さらには、宿に滞在していた強盗殺人犯を殺害して金品を奪うなど、欲望のままに振る舞います。

重四郎の愛人であったおふみは、彼の悪事を証言し、大岡越前の捜査に協力します。そして、重四郎の逮捕、裁判へと繋がっていきます。

大岡越前と城富の執念

大岡越前は、事件解決のため、様々な策略を用います。富右衛門の処刑は、重四郎を自白へと追い込むための、越前の巧妙な策略の一部でした。 また、城富の「越前の首を頂戴する」という大胆な約束は、物語に緊張感と意外性を加えています。

城富の執拗なまでの犯人捜し、そして大岡越前の綿密な捜査は、重四郎の悪事を暴き、最終的に彼を裁くための重要な要素となります。

重四郎の最期と物語のテーマ

物語は、重四郎の逮捕、そして裁判へと進みます。重四郎は、多くの殺人を自供しますが、平兵衛殺害だけは頑なに否認します。しかし、大岡越前の巧妙な策略と、白石同心の発見した物的証拠、そしておふみの証言によって、ついに重四郎の全ての悪事が明るみに出ます。

市中引き回しの上、磔獄門、火あぶりの刑によって、重四郎は最期を迎えます。 彼の最期の言葉は、彼の生き様、そして大岡越前との対比を示唆しています。

この物語は、単なる悪党の物語ではなく、正義と悪、執念と策略、そして人間の業を深く描いた作品と言えます。大岡越前の知略、城富の執念、そして重四郎の悪行が複雑に絡み合い、見る者に深い余韻を残します。

余談：神田松之丞とYouTube

近年では、神田松之丞（現・6代目神田伯山）による『畔倉重四郎』の完全通し公演の動画がYouTubeで公開され、新たな注目を集めています。 古典芸能である講談が、現代のメディアを通じて広く知られるようになった好例と言えるでしょう。

この物語は、今後も多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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