疫鬼

疫鬼（えきき）とは

疫鬼は中国における鬼神や妖怪として知られ、主に疫病を引き起こす存在とされています。古代中国の伝承によれば、これらの鬼は人々に苦しみをもたらすため、様々な儀式や祈祷が行われてきました。疫鬼という言葉は「行疫神」とも呼ばれ、この神は特に疫病に関して人間に影響を及ぼすものとされています。

起源と伝説

疫鬼の起源については、古代中国の帝王である顓頊の子供たちが3人の疫鬼になったという伝説や、王の共工の子供が冬至の日に死んで疫鬼になった話が伝えられています。このため、疫鬼に関連した風習として、冬至の日には小豆粥を作る習慣があるとされています。この行為は、鬼を祓うためのものであり、特に小豆が鬼が嫌う色と考えられているため、豆粥を用いるのです。

儀式と信仰

古代の中国の歴史書『後漢書』の礼儀志中には、「大儺、謂之逐疫」という文言が残されており、大儺や驅儺、追儺といった儀式が行われていました。これらの儀式は疫鬼たちを祓うためのもので、大衆の病気を回避するための重要な手段として位置づけられていました。民間の信仰でも、疫鬼は病気や流行病の元凶として認識され、様々な儀式や供物が用いられました。

さらに、仏教的な行事である盂蘭盆会や水陸会においても、疫鬼は参加する霊たちの一部として扱われ、これを鎮めるための季節ごとの儀式が行われました。このような儀式は、疫鬼の存在が人々の日常生活にどのように影響を与えていたかを示しています。

子供の姿で現れる疫鬼

神話の中では顓頊や共工といった伝説上の人物の子供が疫鬼となったと伝えられ、疫鬼はしばしば子供や幼児の姿で現れると考えられていました。『録異伝』には、神が小さな子供を縛ることで病が回復したというエピソードや、病気に苦しむ際に周囲にいた子供の一人をつかまえることで水鳥に姿を変え病が癒えたという話が存在しています。

日本における疫鬼

日本においても疫鬼は重要な存在であり、祝詞の一つ『儺祭詞』には「穢悪伎疫鬼」という表現が見られます。疫鬼は「けがらわしきえやみのかみ」とも呼ばれ、疫神や疫病神として、特定の儀式や風習が続いています。また、宮中の追儺において疫鬼の姿が描かれ、十コの鬼を退治する鍾馗の姿が絵画に表されています。

朝鮮における疫鬼

朝鮮半島では、疫病に関連する疫鬼に特定の名称が付けられ、対応する日が設定されています。巫覡などの民間の道士たちが病気に対応したり、冬至の日に豆粥を炊いて門や壁に塗る儀式を行う習慣があります。この儀式は、豆が鬼神たちに忌避されることと関連しており、特に赤い小豆が広く使われています。このため、冬至には各地で小豆粥が食べられ、鬼神を避けるための供物としての役割を果たします。

このように、疫鬼は中国、日本、朝鮮といった地域で異なる形で信仰され、様々な儀式や伝説で人々の生活に影響を与え続けています。

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