登坂車線

登坂車線について

登坂車線（とうはんしゃせん）とは、上り坂で速度が低下する車両が安全に通行できるように設けられた専用の車線を指します。この車線は主に、日本やアメリカ合衆国などで設置されており、トンネルや橋の上り坂など、勾配が急な道に見られます。特に大型トラックなど重量のある車両や、能力が制限される原動機付自転車などが登坂車線を利用します。

日本における登坂車線の設置

日本において、登坂車線は通常、本線車道の左側にある路肩を拡幅する形で設置されます。その初めに「遅い車は登坂車線」という標識が立てられ、乗用車や小型車両に対しても利用を促します。道路構造令の第21条では、特に勾配が5%を超える普通道路や、設計速度が100km/hを超える高速道路では、必要に応じて登坂車線の設置が義務付けられています。このため、新しく建設される道路では主にこの基準が採用されます。

しかし、過去に建設された道路にはこれらの基準が適用されていないことが多く、改良工事の際に登坂車線が追加されることが多くあります。また、交通量が少ないと予測される地域や小型道路の場合には、登坂車線が設置されないこともあります。

道路交通法では、登坂車線は本線車道とは異なる扱いを受けるため、例えば高速道路の本線車道で最低速度違反が適用されない場合、登坂車線を利用することで速度に関する制約を受けなくなります。そのことから実質的に登坂車線での走行が必要とされ、速度が最低速度に満たない場合でも違反とは見なされません。

アメリカにおける登坂車線

アメリカでは登坂車線が「クライミングレーン」と呼ばれており、日本同様に運転の安全性を高めるために設置されています。車両の速度が大きく低下する際に、他の車が後方から追突するリスクを低減させる役割を果たしています。

避譲車線について

都市と地方の交通状況には大きな違いがあります。特に地方部では、2車線の道路に多様な速度の車両が混在することから、運転の心理的負担や無理な追越しが見られることがあります。そこで設けられるのが「避譲車線」と呼ばれる車線です。これは、運転者が後続車両に道を譲るために設計されたもので、登坂車線と似たような構成です。

「2+1車線道路」の取り組み

ドイツやスウェーデンでは、「2+1車線道路」と呼ばれる方式が採用されています。この道路形式は、3車線の幅をもち、そのうちの1車線を交互に付加追越車線として使用することで、一定の交通流を確保するものです。1990年代以降、この形式が道路安全や交通効率の向上に寄与していることが確認され、スウェーデンでは導入後に事故死亡者数が約80%減少したとの報告もあります。

ロシアのサハリンでは、ユジノサハリンスクからコルサコフまでの42kmにわたってこのような道路が整備されています。これにより各国は、登坂に関連する交通安全性の向上を目指しています。

日本におけるゆずり車線

日本では、ゆずり車線またはゆずりゾーンが整備されており、主に地方の片側一車線の高速道路で設けられています。必要に応じてこれらの車線が設置されることで、後続車両のためのゆとりを持った運転環境が整えられています。

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