益田ミリ

益田ミリ（ますだ ミリ）は、1969年に大阪府で生まれ、イラストレーター、漫画家、そしてエッセイストとして幅広く活躍しています。彼女の作品は、飾らない言葉と温かい筆致で日常のささやかな出来事や人々の内面を丁寧に描写し、多くの読者から支持を得ています。

幼少期を大阪で過ごし、京都芸術短期大学では油絵を専攻しました。卒業後、一時コピーライターを目指して事務職などのアルバイトを経験する中で、イラストレーションの講義を受けたことが、その後の進路を決定づける転機となりました。26歳まで関西を拠点としていましたが、イラストレーターとして本格的に活動することを志し上京。

東京では働きながらも、自作を出版社に持ち込む努力を続けました。その中でいそっぷ社の編集者の目に留まり、2001年に発表した『OLはえらい』で作家として本格的にデビューを飾ります。初期にはイラストレーションに加え、「川柳も書ける」と積極的にアピールし、それが春陽堂書店からの出版につながったという逸話も残っています。

彼女のキャリアにおける大きな転機となったのは、2006年に刊行された『すーちゃん』です。働く女性たちの日常を描いたこの作品は広く注目を集め、2013年には『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』として映画化されました。柴咲コウ、真木よう子、寺島しのぶといった実力派俳優が主演を務め、御法川修監督がメガホンを取りました。

児童書の分野でも評価が高く、2011年には『はやくはやくっていわないで』で第58回産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞しています。

その後も創作活動は精力的に続き、多くの作品が生み出されました。エッセイ、漫画、絵本など、そのジャンルは多岐にわたります。特に、大阪での暮らしを振り返るエッセイ『大阪人の胸のうち』は、第5回大阪ほんま本大賞特別賞（ノンフィクション部門）を受賞し、故郷への温かい視点が評価されました。また、『僕の姉ちゃん』シリーズや『スナック キズツキ』はテレビドラマ化され、広く一般に知られるきっかけとなりました。

近年もその勢いは衰えず、2024年には『ツユクサナツコの一生』で第28回手塚治虫文化賞短篇賞を受賞するなど、文芸分野でも高い評価を得ています。

私生活では、自身の名「ミリ」が本名ではなく、小学生の頃に友人につけられたあだ名であることを明かしています。その由来は本人も知らないまま大人になったというエピソードも、彼女の持つどこか掴みどころのない、親しみやすい人柄を表しています。

現在も朝日新聞での連載『オトナになった女子たちへ』（伊藤理佐らと交代執筆）や、ミシマ社のウェブ連載「今日の人生」など、様々な媒体で作品を発表し続けています。「今日の人生」は彼女の代表作の一つとして、コロナ禍における共感を呼ぶエッセイとしてNHKニュースでも取り上げられました。

益田ミリは、自身の経験や周囲の人々への温かいまなざしを通して、多くの人々が抱える日常の悩みや喜び、悲しみを共有し、そっと寄り添うような作品を生み出し続けています。その飾らない言葉と共感を呼ぶ視点は、現代を生きる私たちに静かな感動と気づきを与えてくれます。

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