相場英雄

相場英雄（あいば ひでお）

相場英雄は、1967年9月18日に新潟県三条市に生まれた日本の小説家、経済ジャーナリストです。

経歴

新潟県立三条高等学校を卒業後、外国語専門学校を経て、1989年に時事通信社へ入社しました。当初は情報端末の編集部門で市場データの編集業務を担当していましたが、市況担当記者に欠員が出たことを機に記者職へと転身します。経済部記者としては、日本銀行や東京証券取引所といった要職を担当しました。しかし、大卒ではなかったため、当時最も重要な担当の一つであった大蔵省（現・財務省）を担当することはできませんでした。

経済記者として培った知見と経験は、後に小説家としての彼の活動の基盤となります。

作家デビューと評価

記者として活動する傍ら、執筆活動を始めます。2005年、経済の裏側を描いた『デフォルト 債務不履行』が第2回ダイヤモンド経済小説大賞（現在の城山三郎経済小説大賞）を受賞し、小説家としてデビューを果たしました。この受賞を機に、翌2006年には時事通信社を退社し、執筆に専念する専業作家となります。

その後、社会の様々な問題をテーマにした作品を次々と発表し、人気作家としての地位を確立していきます。特に2012年に刊行された『震える牛』は、食品偽装問題を扱った衝撃的な内容が話題を呼び、累計28万部を超えるベストセラーとなりました。

作品は文学賞の候補にも多数選ばれています。

『血の轍』（2013年）は、第26回山本周五郎賞および第16回大藪春彦賞の候補作に選出。
『ガラパゴス』（2016年）は、第29回山本周五郎賞の候補作となり、同年の「週刊文春ミステリーベスト10」で第17位にランクイン。
* 『不発弾』（2017年）もまた、第30回山本周五郎賞の候補に挙がるなど、高い評価を受け続けています。

作風と主なシリーズ

相場英雄の作品は、経済、金融、企業犯罪、食品偽装といった現代社会が抱える問題や、警察組織の内部、さらには社会の暗部や人間の倫理観に深く切り込む社会派ミステリー、経済小説が多いのが特徴です。ジャーナリスト時代の経験が活かされた、リアリティ溢れる描写と複雑なプロット展開が読者を引きつけます。

主な小説シリーズには、地方を舞台にした「みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎シリーズ」、警視庁の継続捜査班を描く「警視庁捜査一課継続捜査班・田川信一シリーズ」、経済犯罪を追う「ナンバー」シリーズ、元公安の刑事が活躍する「古賀遼シリーズ」、そして報道の世界を舞台にした「トップリーグ」シリーズなどがあり、それぞれ異なる切り口で現代社会の病巣を抉り出しています。

また、小説以外にも、漫画原作も手掛けており、『フラグマン』や『書かずの753』といった作品があります。

映像化作品

多くの作品がその社会性とエンターテインメント性の高さから映像化されています。テレビ東京系列では「水曜ミステリー9」枠で「みちのく麺食い記者 宮沢賢一郎シリーズ」が、WOWOWでは「連続ドラマW」として『震える牛』、『血の轍』、『不発弾 〜ブラックマネーを操る男〜』、『トップリーグ』が、NHK BSプレミアムでは『ガラパゴス』がそれぞれドラマ化されており、幅広い視聴者に支持されています。

経済ジャーナリストとして社会の現実を見つめてきた経験と、小説家としての卓越した筆力が融合した相場英雄の作品は、現代社会を理解するための貴重な視座を提供し続けています。

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