矢来能楽堂

矢来能楽堂の概要

矢来能楽堂（やらいのうがくどう）は、東京・新宿区矢来町に位置する公益社団法人観世九皐会によって保有されている能楽堂です。この能楽堂は、観世九皐会の本拠地として活動の中心となっており、能楽の重要な発信地となっています。1952年に現在の舞台と建物が完成し、その歴史は約70年にわたります。東京都内の能楽堂の中では、杉並区にある大蔵流狂言の山本家の舞台に次いで古いものとなります。

歴史

矢来能楽堂の歴史は、観世清之が初めて神田西小川町に舞台を設けた1908年から始まります。しかし、その舞台は関東大震災で焼失してしまいます。その後、1930年に牛込矢来町の現在地に移転し、再び舞台を復興しました。しかし、再び1945年の空襲で二度目の焼失を経験します。この困難を乗り越え、戦後に家業を受け継いだ二世観世喜之は、舞台復興を果たすことに心血を注ぎました。資材が不足する中、御料林の檜を譲り受け、1952年に今日の舞台を完成させました。以降、二世とその養子である三世観世喜之の時代にわたり、観世九皐会の活動拠点として機能し続けています。2002年には再建から50周年を迎え、日数能が開催されました。また、2011年には国の登録有形文化財として認定され、文化的な価値が認められています。

施設について

矢来能楽堂の舞台は、本舞台幅が5.4メートル、奥行きが5.7メートルという寸法を持ち、後座の奥行きは2.7メートル、地謡座の奥行きは2.1メートル、橋掛りの幅は2.1メートル、長さは6.5メートルという設計です。屋根は寄席棟造りで、天井がやや高めであるのが特徴的です。また、鏡板には河辺菊久による影向の松と竹が描かれています。

この能楽堂の構造は木造モルタル造りで、定員は300名を収容できるように設計されています。正面、脇正面、中正面には椅子席が用意されていますが、正面と脇正面の後方には、古風な座敷造りの見所が残されており、和洋折衷のユニークな設計となっています。矢来能楽堂は、能楽堂で初めて固定の椅子席を取り入れたことで知られています。さらに、ロビーには能用品の売店があり、地下には喫茶室も設けられています。

矢来能楽堂で行われる演能会

矢来能楽堂を中心に、多くの演能会が開催されています。その中でも、観世九皐会の例会や別会は定期的に行われており、年間に12回の定例能が行われます。別会は、国立能楽堂など他の場所でも開催されることがあります。また、神遊公演は観世喜正を始めとする能楽師たちによる公演で、年に2～3回実施されています。現在ではこの公演の大半が矢来能楽堂以外で行われることが多くなっています。

若竹能は、観世九皐会に所属する若手能楽師による研究公演で、年に2回実施されます。また、のうのう能は観世喜正の主催による解説付きの入門者向け公演であり、こちらも年に3～4回行われます。この他に、金春流の定期能「円満井会」が矢来能楽堂を借りて公演を行うこともあります。これらの演能活動は、文化の伝承と発展に寄与しています。

矢来能楽堂は、その豊かな歴史と文化的な役割により、東京における能楽の重要な拠点となっており、訪れる人々にその魅力を伝え続けています。

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