神戸市立須磨海浜水族園

神戸市立須磨海浜水族園：半世紀以上にわたる歴史と記憶

神戸市立須磨海浜水族園、愛称「スマスイ」は、1957年5月10日、神戸市須磨区の須磨海浜公園内に開園しました。当初は「神戸市立須磨水族館」として、交通局の管轄下で運営されていました。その後、1968年以降は神戸市の直轄となり、1987年には現在の施設が完成し、現在の名称となりました。この施設は、その後続々と建設された大型水族館の先駆け的存在でした。

数々の記録と革新

1987年には年間240万人の入場者を記録し、当時の日本記録を樹立しました。これは、葛西臨海水族園や海遊館が記録を更新する以前のことです。

スマスイは、飼育と展示においても数々の功績を残しています。1977年には世界で初めてロングノーズガーの繁殖に成功しました。また、関西で初めてラッコの展示を行い、来場者を魅了しました。

多様な展示施設

水族館内には、様々な魅力的な展示施設がありました。

波の大水槽「Wave Tank」: 間口25m、水量1200tを誇る大水槽は、世界初の造波設備を備えていました。
アマゾン館: 日本初のチューブ型水中トンネルを備え、ピラルクなどアマゾンの魚類を展示していました。
さかなライブ劇場: ピラニアの大群が泳ぐ迫力満点のトンネル水槽がありました。
森の水槽: 半地下式の水槽で、ハイギョやオオサンショウウオ、アジアアロワナなどを展示していました。
ラッコ館: ラッコのエサやりを実演するなど、来場者との距離が近い展示が人気でした。
イルカライブ館: 毎日イルカショーを開催し、多くの人々を楽しませました。

その他にも、バードケージ、世界のさかな館、ウミガメプール、ペンギンプール、標本展示室、企画展示館など、多様な展示施設が充実していました。

ユニークな試みとして、波の大水槽の前にこたつを設置し、暖を取りながら鑑賞できるサービスも行っていました。また、長崎大学水産学部の協力のもと、マングローブキリフィッシュ（脊椎動物で唯一自家受精をする魚）の展示も行われていました。

神戸と水族館の歴史

スマスイの歴史は、神戸市と水族館の歴史と深く関わっています。

1895年、神戸市は第4回内国勧業[[博覧会]]に協力し、和田岬の遊園地「和楽園」に「和田岬水族放養場」を開設しました。これが、日本における本格的な水族館の起源とされています。

その後、湊川公園にも湊川水族館が建設されましたが、第二次世界大戦で焼失しました。

閉園と新たな始まり

2019年には建て替えが決定し、2022年1月より再整備事業が開始されました。工事のため、2023年5月31日に営業を終了し、全施設が閉鎖解体されました。そして、2024年6月1日、跡地には民営の「神戸須磨シーワールド」が開業しました。

閉園までに、スマスイの記憶を次世代に繋ごうと、ドキュメンタリー映画『スマスイ』も制作されました。

震災からの復興と民営化

1995年の阪神・淡路大震災では、大きな被害はありませんでしたが、停電により多くの生き物が犠牲になりました。

神戸市は、スマスイの民営化を決定し、2019年9月にはサンケイビル、グランビスタホテル＆リゾート、阪神電気鉄道など7社からなる企業グループが優先交渉権者となりました。

民営化後、利用料金の高騰が懸念され、市民や議会から様々な意見が出ています。

スマスイは、多くの思い出と歴史を刻んだ神戸のランドマークでした。その歴史と記憶は、新たな神戸須磨シーワールドへと受け継がれていくことでしょう。

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