神棚

神棚：日本の家庭における神道の聖域

神棚は、主に神道において、家庭や事業所で神を祀るために用いられる棚です。神道の信仰における重要な役割を担い、日本の文化や歴史と深く結びついています。

神棚の種類と役割

神棚には様々な種類があり、祀る神や設置場所によって形態が異なります。最も一般的なのは、伊勢[[神宮]]を模した宮形神棚で、神宮大麻や氏神札などを祀ります。これを札宮と呼び、狭義の神棚を指すこともあります。

一方、荒神や稲荷神など、系統の異なる神を祀る神棚も存在します。荒神は台所、恵比寿・大黒は勝手口などに祀られることが多く、商家では縁起物と共に飾られることから「縁起棚」と呼ばれることもあります。また、特定の期間のみ設置される歳徳神の恵方棚などもあります。

さらに、神札よりも神の依り代としての意味合いが強い「御神体」を祀る神棚もあります。この場合、神社の分社とみなす考え方もあります。

神棚の設置と構成

神棚は、明るく清浄で、日当たりと風通しの良い高い場所に設置するのが理想とされています。方角は南向きまたは東向きが基本で、二階に設置するのが望ましいとされています。設置場所が限られる場合は、雲板や雲文字を用いることもあります。

神棚の構成要素としては、中心となる宮形、神鏡、榊、灯明、注連縄などが挙げられます。宮形は、神札を納めるもので、神明型や片屋根型など様々な形状があります。神札の入れ方にも、伊勢[[神宮]]を優先したり、逆に奥に置くなど、神社によって異なる場合があります。

神具としては、神鏡、榊立て、灯明の他に、折敷、土器、瓶子、水玉などがあり、これらをセットで用意することもあります。神鏡については、神が全てを見通す、見る人によって異なる、神性と向き合う、神の光を映すなど、様々な解釈があります。

神饌とお供え

神饌（お供え）は、米、酒、塩、水が基本で、他に乾物、野菜、果物、菓子などが供えられます。米、酒、塩、水は毎日、榊は月に2回程度新しいものに取り換えるのが良いとされています。合格通知などの祝い事の熨斗紙を捧げることもあります。獣肉、乳製品、ネギ類は避けることが多いですが、地域や祭神によっては供える場合もあります。供えた食べ物は「お下がり」としていただくのが一般的です。

拝礼方法

神饌を供えた後、家族揃って祈るのが理想的ですが、各自で外出前に祈っても構いません。拝礼方法は「二礼二拍手一礼」が一般的ですが、「二礼四拍手一礼」など、様々な流儀があります。神棚拝詞を唱えることも推奨されています。

拝礼の順序は、神前へ進み、深揖（45度）、二礼（90度）、二拍手、一礼（90度）、深揖の順で行います。参拝前には洗面と漱ぎが望ましいです。祝詞を奏上する場合は、深揖→二礼→祝詞奏上→二礼二拍手一礼→深揖の順になります。

忌中の対応

身内に不幸があった場合は、50日間神棚の扉を閉じて白い紙を貼り、お供えや拝礼は控えなければなりません。これは「黒不浄」と呼ばれ、出産や月経による「赤不浄」も同様に、神棚への参拝を控える風習がありましたが、現代では厳格に守られることは少なくなっています。

神棚の歴史

神を祀る棚の最古の記述は『古事記』にありますが、現代のような神棚が普及したのは江戸時代中期以降です。御師による伊勢[[神宮]]信仰の普及や、明治時代の太政官布告による守札の配布などが、神棚普及の大きな要因となりました。

武道道場と神棚

現代の武道道場には神棚が設置されることが多いですが、これは明治以降の国家[[神道]]の影響です。第二次世界大戦後は撤去されましたが、現在でも多くの道場に設置されています。

神棚と家相、仏教との関係

家相においては、神棚の設置場所が家の中心点とされる考えがあり、様々な流派が存在します。また、神仏習合の影響から、仏教でも神棚に御札を祀る場合があります。

神棚は、日本の家庭における信仰の象徴であり、その歴史や文化、多様な形態は、日本の伝統文化の一端を垣間見せてくれます。

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