立川水仙郷

立川水仙郷（たちかわすいせんきょう）は、かつて兵庫県洲本市由良町由良に存在した、ユニークな魅力を持つ観光施設です。

施設概要

1967年に開園したこの施設は、美しい水仙畑で知られる一方で、併設された一風変わった施設もメディアに取り上げられ、多くの注目を集めました。長年にわたり運営されていましたが、2023年9月2日に惜しまれつつ閉館。しかし、その後は期間限定で臨時営業が行われるなど、その存在は今も多くの人々の関心を集めています。

水仙畑の魅力

淡路島の冬を彩る代表的な水仙名所の一つとして、南あわじ市の灘黒岩水仙郷と並び称されました。例年1月から2月にかけての時期、約500万本の色とりどりの水仙が、太平洋を見晴らす南向きの斜面一面に咲き誇り、あたりには独特の甘やかな香りが満ちあふれます。灘黒岩水仙郷が主にニホンスイセンの自生地であるのに対し、立川水仙郷は観光農園として整備され、栽培された様々な品種、特に地中海原産の外来種が多く植えられていた点が特徴的でした。また、運営形態も公営の灘黒岩に対し、立川は私営でした。その美しい景観は全国的にもよく知られ、多くの写真集やガイドブックに掲載されていました。

ナゾのパラダイス

水仙の開花時期が限られることから、年間を通して集客を図る目的で、初代館長の東田芳高氏が1980年代初頭に開設したのが、併設された施設群です。「ハーハー笑うところ」「3倍おもしろい」といった刺激的なキャッチコピーを掲げた看板とともに、「UFO神社」や「淡路島ナゾのパラダイス」といった施設がありました。当初は「淡路島秘宝館」と呼ばれていましたが、後に「ナゾのパラダイス」の名称が定着しました。

この「ナゾのパラダイス」の内部は、初代館長の東田氏が長年かけて日本全国から収集した性にまつわる珍品や奇品が所狭しと並ぶ、独特の世界が広がっていました。「おしべとめしべのことをまなぶところ」と書かれた建物の中には、木彫りの巨大な男根像や、たつこ神社などがあり、東田氏の古物収集の趣味が高じて集められた性の関連品が多数展示されていました。また、壁一面には東田氏が妄想を膨らませて書いたという、A4判約500枚に及ぶ手書きの格言集が貼り巡らされていました。訪れた人々が自由に書き込める落書き帳も置かれており、その内容は館内に展示されるというユニークな趣向もありました。

この施設が全国的に有名になったのは、1989年11月4日に朝日放送テレビの番組『探偵!ナイトスクープ』で「淡路島ナゾのパラダイス」として取り上げられたことがきっかけです。桂小枝探偵によるこの調査企画は大きな反響を呼び、番組内での「パラダイス」シリーズの元祖となりました。施設内には、番組で紹介されたことを伝えるポスター（ただし「ナイトスプーク」と誤記されていた）や、調査の際に小枝探偵が書き残したとされる落書きや記念碑などが展示されていました。この放送回は後に番組のDVDにも収録されています。

なお、「ナゾのパラダイス」への入場は18歳未満に制限されていました。また、『探偵!ナイトスクープ』以外にも、『たけし・さんま世紀末特別番組!! 世界超偉人伝説』に関連する歌碑が建てられるなど、他のメディアとの関わりもありました。

閉館と臨時営業

長年にわたり運営されてきた立川水仙郷は、初代館長の長男である2代目館長が急逝したことを受け、2023年9月2日に閉館しました。しかし、閉館後もその独特な魅力への関心は高く、同年12月29日から31日にかけて「ナゾのパラダイス」のみを公開する形で3日間限定の臨時営業が行われました。さらに、2024年に入ってからも、不定期ながら期間限定での臨時営業が続けられています。

所在地とアクセス

かつての所在地は兵庫県洲本市由良町由良2877-22でした。車でのアクセスは、神戸淡路鳴門自動車道の淡路島中央SICまたは洲本ICから由良・灘方面へ約40分です。公共交通機関では、洲本バスセンターから洲本市コミュニティバス上灘・沼島線を利用し、「立川水仙郷」バス停で下車できますが、便数が限られていました。かつて冬季に運行されていた水仙シャトルバスは廃止されています。

立川水仙郷は、美しい自然景観と唯一無二の個性が融合した、淡路島を代表する観光名所の一つとして、多くの人々の記憶に残っています。その歴史や魅力は、閉館後も語り継がれることでしょう。

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