符

符（ふ）についての詳細

「符」とは、律令制度の下で上級官司（所管）が下級官司（被管）に命令を伝えるために使用された公文書です。この文書は、竹や木に文字を刻み、二つに分けて一方を相手に渡すことで、後日に証明として用いられてきました。具体的には、中国においても同様の言い回しがあり、命令を届けた使者とその命令を受ける側との間で、その正当性を示す証明手段として機能していました。

古代日本においては、「符」には様々な和訓が付けられており、例えば「アラハス」や「カナフ」といった文字は証に関する用法から派生しています。一方で、「シルシ」や「オシテ」は文書の性質にも関連しているため、発展的な理解が求められます。

太政官が発行する符は通常「太政官符」として知られていますが、他の官庁、例えば八省や弾正台なども、それぞれの下級官司や地方の国に向けて符を発行していました。これにより、例えば民部省による省符が、特定の荘園に不輸の権を与えるなどの実行を確認するために利用されていました。また、大宰府や国司もそれぞれ独自の符を使用しており、時には郡司による「郡符」が木簡に刻まれて出土するなど、広範な使用がなされていました。

公式な文書としては、符には特定の書式が定められており、通常は「○○○符其×××」の形式で始まります。続けて、命令の内容が記載され、文書を受け取る側にその命令が実行されることを促す「符至奉行」という文句が付されます。太政官符の場合はさらに内容の概要が補足されることがあります。

書止の形式も重要で、通常は「符至奉行」などの標準な表現に加え、他の略式表現が使用されることもあります。署名には文書の発給を担当した者の役職、位階、氏名が記され、その下に発給された日付が書かれます。符独特の形式として、これらがそれぞれ改行されている点が挙げられます。

平安時代中期以降、太政官符は官宣旨と呼ばれる新たな形式に取って代わられましたが、一部の符については明治維新まで存続していたことが確認されています。これは、文書としての形態が変わったとはいえ、符そのものの重要さと正式な公文書としての機能が求められていたことの表れです。

このように、「符」は日本の律令制度において官公庁の命令や伝達の重要な手段であり、またその使用形態が時代と共に進化してきたことがわかります。公文書の中での役割を果たしつつ、歴史の中で様々な変遷を経て現在に至るまで、その存在意義は色褪せることがありません。

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