官宣旨
官宣旨について
官宣旨（かんせんじ）は、平安時代における重要な公文書であり、弁官が発給する官署の文書です。この文書は、太政官上卿の口宣を基にしており、全国の寺社や地方に向けて発行されました。官宣旨は、官符や官牒の役割を果たすもので、行政や非常時の対応において重要な機能を持っていました。
概要
通常、太政官の公文書は外記局により作成されていますが、官宣旨は弁官局が発給の責任を持っています。これにより、官印の押印が省略され、迅速な対応が可能となります。「官」とは、ここでは「太政官」ではなく「弁官」を指すのが通説です。
弁官局には役職に応じた左弁官と右弁官が存在し、通常は左弁官が正当な行政や事案に関する官宣旨を発行し、右弁官は犯罪者の追捕に関わる事務を担当しています。そのため、実際の官宣旨の発行は左弁官に多く見られます。
官宣旨の作成は、天皇から伝えられる宣旨内容をもとに、上卿が弁官に指示を出し、その後、弁官の属官たちが具体的な文章を作成する仕組みです。書式は漢文真書体が用いられ、まず「左弁官下」という書出から始まり、宛所や事書と続きます。最後に、年月日や作成した史の署判が記され、発給した弁官の署判も添えられ、文書が締められます。
手続きの簡易性
官宣旨は、通常の公文書とは異なり、発行手続きが簡単で迅速です。太政官符や官牒を得るためには、少納言や外記の関与が必要であり、手続きが煩雑であるため緊急の際には不適切でした。そのため、官宣旨が代替手段として利用されることになりました。ただし、正式な官符や官牒が後に発行されることが前提であり、必要がない場合でも「官符追下」の文が付されることが多く、急を要する命令でも用いられることがありました。
歴史的変遷
官宣旨は9世紀には既に存在していましたが、11世紀に入るまでは主に寺社への一時的な命令に用いられました。発給手続きの簡易性や直接的な伝達が可能であったため、官宣旨は他の正式な文書より広く利用されるようになりました。特に11世紀中期以降では、本来太政官符で処理されるべき案件でも官宣旨が使用される事例が増え、さらにその範囲は広がっていきました。
鎌倉時代以降、官宣旨の役割には変化が見られ、院宣や綸旨などが多く用いられるようになり、寺社への正式な通告や指示に限られるようになっていきました。これにより、官宣旨の利用は次第に限定的なものとなっています。
参考文献
関連項目
官宣旨は、平安時代における迅速な行政対応を支え、地方や寺社との円滑なコミュニケーションの確保に寄与しました。
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