筋違い角

筋違い角：将棋における奇襲戦法

筋違い角とは、将棋において角行を初期配置（8八または2二）とは異なる筋に打つことを指す専門用語です。この配置の角は、成らない限り「符号の合計が偶数」のマスにしか移動できません。そのため、初期配置の角が移動できないマスに打たれた角を筋違い角と呼びます。

戦法としての筋違い角

筋違い角は、序盤から一歩得を狙う奇襲戦法として用いられます。角換わりをベースにした戦法が多く、後手が角交換後に筋違いの位置に角を打つことで、相手の予測を裏切り、局面を有利に進めることを目指します。

代表的な手順は、▲7六歩△8四歩▲2六歩と角換わりを進めた後、後手が△2二銀に▲7八金とせずに▲4五角と打つことから始まります。これは、6三歩成と3四歩を取って一歩得をする狙いです。その後、角を自陣に引き付けて相手の攻めを牽制し、角の利きを活かして優勢を築こうとする戦法です。

一手損角換わりが主流となった現代では、▲7六歩△3四歩▲2二角成△同銀▲4五角と角を打つ展開もみられます。この場合も、3四の歩を取ることが主な目的です。その後は、棒銀、向かい飛車など、様々な戦型へと発展していきます。

メリットとデメリット

筋違い角を用いるメリットは、以下の通りです。

序盤で一歩を得する
相手の戦型を（主に居飛車に）限定できるため、振り飛車党相手には有効
研究が進んでいないため、奇襲として有効な可能性がある
角の動きが通常と異なるため、相手の錯覚を引き起こしやすい

一方、デメリットも存在します。

打った後の生角の扱いが難しい
手損となる場合がある（先手にとってのメリットが小さくなるため、後手番ではあまり使われない）
* プロ棋士の評価は高くなく、勝率も5割を下回るという見方もある

特に、プロ棋士からは、序盤で角を損失することによる戦術的なデメリットや、生角の活用が難しい点が指摘されています。

プロ棋士と筋違い角

筋違い角は、過去にはプロ棋戦でも使用されており、木村義雄九段が名人戦で用いて勝利したことも有名です。しかし、近年は滅多に指されることはありません。

武市三郎九段は現役時代にこの戦法を多く採用し、著書も残しています。しかし、『イメージと読みの将棋観』によると、1982年から2008年までのプロ棋戦における戦績は36勝57敗1千日手と、勝率は低くなっています。

筋違い角と他の戦法との組み合わせ

筋違い角は、向かい飛車や四間飛車など、様々な戦法と組み合わせることができます。しかし、これらの組み合わせについても、プロ棋士からは高い評価を得ておらず、勝率も低いとされています。特に、筋違い角四間飛車穴熊は、アマ強豪の中であまり指されない戦法となっています。

筋違い角阪田流と、こなたシステム

阪田流向かい飛車との組み合わせや、対早石田戦用の「こなたシステム」と呼ばれる戦術も存在します。「こなたシステム」は、相振り飛車の趣で、10秒将棋ではプロ棋士に勝利したこともあるとされています。しかし、この戦術も、玉の不安定さなど、リスクを伴うものです。

まとめ

筋違い角は、序盤で一歩得を狙う奇襲戦法として知られていますが、プロ棋士からは高い評価を得ておらず、勝率も低いとされています。しかし、研究不足という側面もあり、うまく活用すれば効果的な戦術となる可能性も秘めていると言えるでしょう。そのため、筋違い角を深く研究し、実践することで、将棋の幅を広げる可能性もあるかもしれません。

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