米久

米久株式会社

米久株式会社は、静岡県沼津市に本社を置く日本の主要な食品メーカーです。かつては食肉加工会社として事業を開始しましたが、現在はハムやソーセージといった食肉加工製品に加え、惣菜や冷凍食品など幅広い食品の製造・販売を手がけています。同社は、伊藤ハム株式会社との経営統合を経て、現在は共同持株会社である伊藤ハム米久ホールディングスの完全子会社となっています。

創業から多角化、そして資本の変遷

1965年に食肉加工卸業として個人創業した米久は、食肉加工製品の製造販売を主軸に成長を遂げました。その後、総合食品メーカーへの転換を目指し、創業家である庄司一族が保有する株式の大半を麒麟麦酒（現・キリンホールディングス）に譲渡。1999年にはキリングループの一員となり、食肉加工製品にとどまらず、惣菜、地ビール、冷凍食品など、積極的な多角化戦略を展開しました。

しかし、その資本関係は再び変化します。2007年には、三菱グループ内での食肉関連事業の再編の一環として、麒麟麦酒が保有していた株式が三菱商事へ譲渡されることとなりました。さらに、2009年1月には、食肉加工大手である伊藤ハムおよび三菱商事との間で包括的な業務提携契約を締結。この提携関係を深める中で、2013年2月には三菱商事の株式公開買付け（TOB）に応じ、同社の子会社となりました。

そして、食品業界における競争力強化を目指し、食肉加工大手の伊藤ハムとの経営統合へと舵を切ります。2015年9月15日に両社間で共同持株会社を設立することによる経営統合の基本合意を発表。翌2016年4月1日、共同株式移転方式によって持株会社「伊藤ハム米久ホールディングス」が設立され、米久はその完全子会社として新たな体制に移行しました。

事業ポートフォリオの再編

経営統合や多角化と並行して、事業ポートフォリオの見直しも進められました。かつて子会社に収めていた居酒屋チェーンのチムニーについては、2009年11月に経営陣とカーライル・グループによるマネジメント・バイアウト（MBO）に伴うTOBに応じ、保有株式を全て売却。現在は資本関係が解消されています。

また、多角化の一環として展開していたビール事業に関しても、2015年6月1日に会社分割によってDHCへ事業譲渡。同年10月1日には、御殿場高原ビールを展開していた子会社の株式を時之栖へ売却し、ビール事業から撤退しました。

一方で、食肉加工事業の強化としては、2019年12月に明治から明治ケンコーハムの全株式を取得し、完全子会社化（後に米久ケンコーハムに社名変更）。2021年1月には米久本体と事業統合を実施しました。

直近では、グループ内での効率化を目指し、2023年4月1日に調達部門や一部子会社を親会社である伊藤ハム米久ホールディングスへ、生産加工部門を伊藤ハム米久プラント（旧・伊藤ハムデイリー）へ、食肉一次加工部門をIHミートソリューションへそれぞれ吸収分割により承継するなど、組織再編が進められています。

主な製品とメディア展開

米久は、「御殿場高原あらびきポーク」「スーパーBOO」「原形ベーコンブロック」「ごちそうフランク」といった代表的な食肉加工製品や、「マザーシェフシリーズ」などの惣菜製品を製造・販売しています。

メディア展開としては、マスコットキャラクター「ソーセージおじさん」が登場する天気予報番組「おいしい村の天気予報」を静岡放送で長年放送しています。また、テレビ番組への提供やCM展開も積極的に行っており、過去にはももいろクローバーZ、松重豊、DAIGOなど、現在ではトータルテンボスや藤岡弘、などがCMに出演しています。

沿革（抜粋）

1965年12月：静岡県沼津市にて食肉加工卸業を個人創業
1969年2月：米久畜産販売サービス株式会社設立
1978年7月：現社名（米久株式会社）に変更
1986年10月：株式を店頭公開
1989年10月：名古屋証券取引所2部上場
1996年10月：東京証券取引所1部上場
1999年：キリングループ入り
2008年1月：名古屋証券取引所上場廃止
2009年1月：伊藤ハム、三菱商事と包括業務提携契約を締結
2013年2月：三菱商事の子会社となる
2015年6月：ビール事業をDHCに譲渡
2015年9月：伊藤ハムと経営統合の基本合意を発表
2016年3月：東京証券取引所上場廃止
2016年4月：伊藤ハム米久ホールディングス設立、同社の完全子会社となる
2019年12月：明治ケンコーハムを完全子会社化
2023年4月：グループ内での吸収分割による事業承継・組織再編を実施

現在、米久株式会社は伊藤ハム米久ホールディングスの中核企業として、食肉加工製品を中心に多様な食品事業を展開しています。

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