美濃和紙

美濃和紙：伝統と革新が織りなす和紙の世界

岐阜県南部、美濃地方で作られる和紙を総称して美濃和紙と呼びます。その歴史は古く、奈良時代には既に官設の紙漉き場が存在したとされ、室町時代には近江商人によって全国に広まりました。江戸時代には、その品質の高さが高く評価され、和紙の代名詞として広く知られるようになりました。

美濃和紙の種類

美濃和紙は大きく分けて、手漉き和紙と機械漉き和紙の2種類があります。

1. 美濃手すき和紙

美濃手すき和紙は、伝統的な技法を用いて作られる和紙です。中でも、特に高い品質と伝統的な製法を維持しているものは「本美濃紙」と呼ばれ、経済産業省の伝統的工芸品、そして国の重要無形文化財にも指定されています。さらに、2014年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されました。本美濃紙は、楮（こうぞ）という植物の繊維のみを原料とし、草木灰やソーダ灰を用いた煮熟、手打ちによる叩解、トロロアオイを用いた抄造、板干しによる乾燥など、工程の全てに伝統的な技法が用いられています。これらの厳格な条件を満たすことで、本美濃紙特有の繊細で丈夫な風合いが実現されています。生産量は美濃和紙全体のわずか1割程度と希少価値も高く、その価値は世界的に認められています。

美濃手すき和紙には、本美濃紙以外にも、用途に合わせて様々な種類があります。美濃手すき和紙協同組合が、岐阜県紙業連合会に加盟し、その品質管理と発展に貢献しています。

2. 美濃機械すき和紙

美濃機械すき和紙は、手すき和紙の技術を基に機械化された製法で作られる和紙です。絶縁紙や導電紙など、特殊な用途の紙も生産されており、現代社会のニーズに応える多様な製品が提供されています。機械化によって大量生産が可能になった一方、手すき和紙に劣らない品質を追求する技術も進化を続けています。

美濃和紙の歴史

美濃和紙の歴史は古く、日本最古の紙の一つとされています。大宝律令の際に戸籍用紙として使用されたという記録も残っています。奈良時代には、美濃国府に官設の紙漉き場が存在し、美濃和紙生産の中心地として発展しました。その後、室町時代には六歳市が開かれ、近江商人によって全国に広まりました。江戸時代には専売制度が敷かれ、大量生産されるようになり、その品質の高さが『和漢三才図会』や『新撰紙鑑』といった文献にも記されています。

明治時代から大正時代にかけては、美濃市を中心に生産が盛んになり、生産戸数は3700戸に達しました。しかし、昭和期に入ると機械漉き洋紙の台頭により、伝統的な手すき和紙の生産は衰退の一途を辿りました。近年では、ユネスコ無形文化遺産登録を機に、伝統的な技法の継承と新たな可能性の模索が盛んに行われています。

美濃和紙と岐阜の伝統工芸

長良川の水運を利用して発展した岐阜の港町では、奥美濃から美濃和紙が運ばれ、問屋町として栄えました。美濃和紙は、岐阜提灯、岐阜和傘、岐阜うちわといった岐阜の伝統工芸品とも深く関わっており、岐阜の伝統文化を支える重要な素材となっています。

美濃和紙の判型

美濃和紙の標準的な大きさは、縦27～29cm、横40～41cm程度です。これよりも大きいものは大美濃と呼ばれ、これらの紙を二つ折りにして冊子にしたものは、それぞれ美濃判、大美濃判と呼ばれます。日本の紙の寸法規格であるJIS B列は、この美濃判に由来しています。

まとめ

美濃和紙は、長い歴史と伝統的な技法を受け継ぎながら、現代社会のニーズに応える多様な製品を生み出し続けています。ユネスコ無形文化遺産登録を契機に、その価値は世界的に再認識されており、今後ますます注目を集めることが期待されています。その繊細で美しい風合い、そして高い機能性は、これからも人々を魅了し続けるでしょう。

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