肥後守

肥後守（ひごのかみ）とは

肥後守は、日本で太平洋戦争前から使われている簡易折りたたみ式刃物（ナイフ）です。
登録商標であり特定の製品の名称ですが、同形状のナイフの総称として広く使われています。

歴史

明治中期、兵庫県の重松太三郎が鹿児島から持ち帰ったナイフを元に考案されました。取引先の多くが九州南部（主に熊本）だったことから「肥後守」と命名されたと言われています。

構造

一般的な肥後守は、金属板をプレス加工した簡易なグリップに、鋼材の片刃の刃部（ブレード）を備えています。ロック機構はなく、「チキリ」と呼ばれる峰部分の突起を親指で押さえることでブレードを固定します。

ブレードの素材は、SK材をプレス加工したものが多いですが、青紙や黄紙などの特殊鋼を割り込んだ高級品も存在します。

1890年代に製造が始まったとされるこのナイフは、単純な構造ゆえに安価で丈夫です。鉛筆削りや竹とんぼなどの玩具作りに使われ、1950年頃に最盛期を迎えました。

衰退と復活

その後、ボンナイフや鉛筆削り器、カッター[[ナイフ]]の普及や、「刃物を持たない運動」の影響で徐々に姿を消しました。しかし近年、団塊世代を中心に静かなブームとなり、熱心な愛好家やコレクターも存在します。

製造と現状

全盛期の昭和30年代には、兵庫県三木市に多数の肥後守製造鍛冶屋が存在していました。現在では、永尾かね駒製作所が登録商標を保有し、製造を続けています。

三木市立金物資料館には、かつて製造された肥後守が多数展示されています。

肥後守は、その名称が大変有名であったため、この形状のナイフの一般名詞として使われることが多くなっています。

登録商標

2021年現在、「肥後守」は永尾かね駒製作所の登録商標であり、同社およびOEM生産のフォールディングナイフの商品名となっています。

しかし、同社以外でも優れた肥後守が製造されており、愛好家の収集対象となっています。

元々は三木洋刃製造業者組合の組合員のみが使用できる名称でしたが、組合員の減少により、現在では永尾かね駒製作所のみとなっています。

品種と価格

ブレードの素材には、全鋼の他、青紙、黄紙、白紙といった特殊鋼が使われます。これらの特殊鋼は、炭素、クロム、タングステンの含有量の違いによって品質が区別されます。

価格は、全鋼でクロムメッキの鞘のものが数百円程度から、青紙割り込みで真鍮鞘のものが1,000円から2,000円程度です。高級品では、白紙、青紙、黄紙などを割り込んだものもあり、桐箱入りで数千円から1万円以上で販売されるものもあります。

肥後守の魅力

肥後守の魅力は、そのシンプルな構造と使いやすさ、そして独特の風合いにあります。
手になじむグリップや、切れ味の良いブレードは、長く使い続けるほどに愛着が湧きます。
また、その歴史や背景を知ることで、より深く肥後守を楽しむことができます。

肥後守に関する補足情報

肥後守は、刃物であるため、取り扱いには注意が必要です。
刃物の扱い方を学ぶために、あえて肥後守を推奨する小学校も存在します。

関連項目

播州三木打刃物
刃物を持たない運動
浅沼稲次郎暗殺事件
銃砲刀剣類所持等取締法
ボンナイフ
鉛筆#削り方

外部リンク

永尾かね駒製作所
肥後守博物館 - SAITO noriyukiによる私設サイト
肥後守展示館 - 手島内科放射線科
上記サイトの2019年4月17日アーカイブ分 - ウェイバックマシン

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