背景

背景：絵画からアニメーションまで

背景は、絵画や写真、漫画などにおいて、主題となる人物や物体を際立たせるための重要な要素です。主題以外の部分、周囲の状況、あるいは物事の裏に隠れた事情などを指し、絵画、特に静物画や人物画では主題の状況や位置を示し、作品の印象を深める役割を果たします。語源は「背の景」、つまり後ろに見える景色です。

舞台芸術における背景

舞台芸術において、背景は舞台装置の一部として、周囲の風景や空などを表現します。西洋ではルネサンス期から、日本では歌舞伎の盛行以降、江戸時代から徐々に発達してきました。書割などの舞台装置を用いて、演劇の世界観を構築する上で欠かせない要素です。

背景画

背景画は、人物や物体の背景として描かれた絵画のことです。演劇、映画、テレビドラマのセットの一部として使用されるほか、アニメーションのセル画でも頻繁に用いられます。スタジオ撮影では、風景を描いた板を背景として使用する場合があり、これを書き割りと呼びます。また、スクリーンに動画を映写するリアプロジェクションという手法もあります。比喩的に、役割が予め決められた人間を「書き割り」と呼ぶこともあります。

アニメーションにおける背景美術

アニメーションにおいて、背景美術はキャラクターや小道具などの作画と並ぶ重要な要素です。キャラクターが生活する舞台を表現し、作品の雰囲気やクオリティに大きく影響を与えます。スタッフクレジットでは「背景」と表記されることが多く、「バックグラウンド」と呼ばれることもあります。

背景美術の制作には大きく分けて二つの工程があります。一つは美術設定や美術ボードで、監督との打ち合わせを通して作品のイメージを捉え、緻密な設定を行う工程です。もう一つは、美術監督の指示のもと、実際に背景画を作成する工程です。

美術設定や美術ボードを担当するのは主に美術監督です。作品のイメージを形にし、建造物の構造や室内インテリアなど、画面上の矛盾がないよう綿密な設定を行います。キャラクターとの調和も重要で、監督や色彩設計担当者と綿密な打ち合わせを重ね、最終的な方向性を決定します。

背景スタッフは、設定やレイアウトに基づき背景画を作成します。高い完成度が求められる一方、個性を主張しすぎず、全体のテイストを崩さないバランス感覚が求められます。30分のアニメでは200～300枚もの背景画が使用され、それらがキャラクターを生き生きとさせる上で不可欠な要素となっています。

背景画の主な技法

グラデーション

グラデーションは、二つの色を混ぜ合わせ、色の境目を目立たなくする技法です。空気遠近法や材質感を表現するのに用いられます。

はがし

石や岩、地面などのザラザラ感やゴツゴツ感を表現する技法です。画用紙が濡れている間に、凸凹のある紙などを押し当てて絵の具を剥がすことで、様々な質感を作り出せます。

背景の種類

城壁・レンガの壁

城壁やレンガの壁は、同じような形が連続するため、単調にならないよう強弱をつけ、リズム感を持たせることが重要です。石やレンガの色も茶色だけでなく、黄色や赤、紫、青など幅広く表現することで、よりリアルな表現が可能です。石の表現や目地の描き方にも注意が必要です。

メカニック背景

メカニック背景やSF的な描写では、「光沢のある金属質」の表現が重要です。グラデーション、筆のタッチ、メカ線を巧みに使い、金属の質感と光沢感を表現します。メカ線は単調にならないよう工夫が必要です。

イメージ背景

イメージ背景は、キャラクターのいる場所ではなく、心象風景などを表現する背景画です。回想シーンなどにも使用され、色の持つ心理的・視覚的効果を考慮して描かれます。

ハイコン背景

ハイコン背景（ハイコントラスト背景）は、雷や爆発など、強い光のコントラストが特徴的な場面を表現する背景画です。明るい部分と暗い部分の差を大きくすることで、光の強さを表現します。

ハーモニー

ハーモニーは、臨場感や期待感を高めるための背景画です。キャラクターや画面を強調する効果があり、キャラクターの部分も背景で着彩し、絵画的なタッチや劇画調の雰囲気で表現されます。完成度は担当者の個性に委ねられ、印象派の絵画のようなハーモニーもあります。

背景ボード

写真撮影で使用されるボードで、撮影対象をより魅力的に見せるための効果として使用されます。

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