自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症について

自閉スペクトラム症（ASD）は、コミュニケーションの障害や行動の繰り返しが見られる神経発達症群に分類される障害です。従来の自閉症に加え、軽度から重度の症状まで幅広く含まれる「スペクトラム」という概念から名付けられています。特に、DSM-5においては、社会的コミュニケーションの障害と限定的な興味・行動を持つ症状が診断基準として定められています。

特徴と症状

ASDの主な特徴には、中核症状と周辺症状があります。中核症状には、社会的なコミュニケーションや相互作用に関する持続的な欠陥が含まれます。例えば、ASDを持つ子どもは、他者と目を合わせることが少なかったり、相手の感情を理解するのが難しい場合があります。また、行動面では、特定の興味に強く依存し、変化に対して抵抗感を示すこともあります。

一方、周辺症状には、言語発達の遅れや知的障害、てんかん、感覚刺激に対する異常な反応などが含まれます。この中で、約30%のASDの子どもたちは知的障害があるとされていますが、全ての子どもがそうであるわけではありません。特に、高機能自閉症に分類される子どもたちは、しばしば平均的な知能指数を持ち、社会的なスキルの習得が可能です。

原因と評価

ASDの原因は、現在の研究では主に遺伝的要因に起因することが分かっています。双子の研究によれば、ASDの遺伝率は高く、90%もの遺伝的影響が示されています。一方、環境的要因の影響も否定できず、特に妊娠中に曝露される特定の医薬品がリスクを高める可能性があるという報告もあります。

診断は通常、生後2年以内に行われ、言語の発達や社会的な応答に基づいて判断されます。医療機関では、ADOS-GやADI-Rなどの評価尺度を用いて、詳細な観察と面接を行い、診断が行われます。

治療と支援

ASDには完治する治療法は存在しませんが、早期の行動療法が最も効果的とされています。薬物療法は主に周辺症状の管理に使用されますが、中核症状に対しては効果が限定的です。親の教育や行動療法、認知行動療法（CBT）などの心理社会的介入も重要です。近年では、メラトニンを用いた睡眠障害の治療が有効であることが示されています。

社会的な影響

ASDは、性別や人種に関わらず広く報告されています。男児に多く見られ、調査によると、特に男児では42人に1人、女児では189人に1人の割合で存在します。発達時期や表現の仕方に男女の差異があるため、女性は誤診されるリスクも伴います。ASDを持つ子どもを支えるためには、周囲の理解や適切な支援が不可欠です。本障害についての理解を深めることで、より良い支援が可能になるでしょう。

自閉スペクトラム症は特異な特性を持ちながらも、多様で幅広い支援を通じて、生活の質を向上させることができる疾患です。そのためには、社会全体での理解と協力が必要です。

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