落下の王国

『落下の王国』：壮大なファンタジーと心の再生

2006年公開の『落下の王国』（原題：The Fall）は、ターセム・シン監督によるインド、イギリス、アメリカ合衆国合作の冒険ファンタジー映画です。重傷を負ったスタントマンが、入院中の少女に語る幻想的な物語が、映画の中心となっています。

1915年のロサンゼルスを舞台に、無声映画のスタントマンとして活躍していたロイは、撮影中の事故で半身不随という重傷を負います。さらに、恋人を主演俳優に奪われるという不幸に見舞われ、ロイは深い絶望の淵に沈んでいました。

そんな彼の病室に現れたのは、オレンジの収穫中に事故で腕を骨折したルーマニアからの移民の少女、アレクサンドリアでした。ロイは、少女を利用して自殺を図ろうと企み、彼女に壮大な物語を語り始めます。

ロイが語る物語は、悪の支配者によって愛する者や誇りを奪われた6人の勇者たちが、復讐を果たすため、そして失われたものを取り戻すために立ち上がる、愛と復讐の物語です。当初は少女を操るための手段として始まったこの物語でしたが、次第に少女アレクサンドリアの心に希望の光を灯し、やがてはロイ自身をも救済へと導く、壮大な叙事詩へと発展していきます。

映画の見どころは、その圧倒的な映像美にあります。ターセム・シン監督は、26年の構想期間を経て、13の世界遺産を含む24ヶ国以上で撮影を行い、4年もの歳月をかけて本作を制作しました。

キャストには、リー・ペイス（ロイ役）、カティンカ・アンタルー（アレクサンドリア役）など実力派俳優が名を連ねています。日本版では、加瀬康之、諸星すみれらが吹き替えを担当しています。

衣装デザインは、アカデミー賞受賞経験もある石岡瑛子が担当。その独特の世界観を彩る衣装の数々は、映画の雰囲気をさらに高めています。さらに、スパイク・ジョーンズやデヴィッド・フィンチャーといった著名な映画監督が製作に携わっている点も特筆に値します。

音楽面では、ベートーヴェンの交響曲第7番の第2楽章が主題曲として使用され、物語の壮大さを際立たせています。

批評家の評価も高く、Rotten Tomatoesでは批評家による高評価の割合が61％、Metacriticでは平均点が64点と、高い評価を得ています。また、シッチェス・カタロニア国際映画祭グランプリなど、数々の映画祭で受賞を果たしています。

『落下の王国』は、壮大な物語と美しい映像、そして心に響くテーマが融合した、忘れられない映画体験を提供してくれる作品です。単なるファンタジー映画にとどまらず、人間の心の再生、希望、そして愛といった普遍的なテーマが描かれており、観る者すべての心に深い感動を与えてくれます。この機会にぜひ、この傑作をご鑑賞ください。

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