蔀

蔀（しとみ）の概要と歴史

蔀（しとみ）は、古代日本の建築様式において使用された建具の一つであり、主に寝殿造などの上級住宅に用いられました。この建具は、日光を遮り、風や雨を防ぐ役割を果たしました。蔀は元々「篰」とも書かれることがあり、その呼称は時代によって変遷してきました。

蔀の起源と役割

日本で最も古い百科辞書の一つである『和名類聚抄』には、蔀についての記載があります。そこでは蔀は「覆暖障光者」という定義がされており、まさにその機能を表しています。特に古代には、天皇の即位儀式を行うために建てられる大嘗宮においても、蔀が活用されており、これがその重要性を示しています。

当時の蔀は、葦や草など身近な材料で作られ、比較的簡易に設計されたものでしたが、次第に布や板を用いるより上等な仕様にも進化していきました。『貞観儀式』のような古文書には、目隠し用の布蔀の使用例が記載されており、蔀に対する理解が深まっていった背景が見受けられます。

平安時代における蔀の用途

平安時代に入ると、蔀は格子状に組まれることが一般的になりました。特に上層住宅では、格子戸が用いられ、開放的な室内環境を作り出すことが重視されました。たとえば、平安時代の物語『宇津保物語』には、質素な寝殿の蔀の描写があり、編垂蔀が使用されている様子が描かれています。この頃から蔀の機能とデザインが多様化していったと言えます。

蔀の材質とデザイン

蔀の材質は様々で、竹や板を加工したものが一般的でした。それに対して、平安時代後期以降の絵巻物には、格子状の蔀が多く描かれています。このような蔀は、単に形状によるものではなく、機能から考えられていることが分かります。特に格子状の蔀は、「蔀」と「格子」という異なる呼称が存在し、機能とは別にその形状に応じて名前が変わることが多かったのです。

また、『西宮記』所引の「蔵人式」によるとすでに仁和年間では蔀の使用が確認されており、古代の権威の高い建物において格子状の蔀が必要不可欠な要素であったことが明らかになります。

蔀の使用と管理

蔀の運用については、当時の文献に多く記録されています。蔀は相当な重量があり、開閉は容易ではなかったため、専任の担当者が設けられていたとのことです。清少納言の『枕草子』などにも、女官一人では開けることが難しいと記されており、その重さと運用の難しさが伝わってきます。蔀は多くの構造物に使用され、開放する際には特定の方法で外し、管理されていました。

まとめ

蔀は日本の伝統的な住居において、風雨を防ぎつつ、開放的な空間を実現するための重要な建具でした。時間とともに、その素材やデザインは進化を遂げ、平安時代における上層住宅での格子状の蔀は、当時の美意識を反映するものでした。蔀の歴史を振り返ることで、古代日本における建築技術と美の探求の一端を理解することができるでしょう。

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