貞観儀式

貞観儀式（じょうがんぎしき）について

『貞観儀式』は、平安時代前期の貞観年間に編纂されたとされる儀式書です。全10巻で構成されており、当時の朝廷における重要な儀式や行事について詳細に記されています。

書名について

現在、この儀式書は『儀式』という名称で伝えられています。しかし、『政事要略』には『儀式 貞観』という記述があり、『本朝法家文書目録』には『貞観儀式』と記されていることから、かつては『貞観儀式』と呼ばれていたとする説が有力です。

一方で、書名が当初から『儀式』であり、『政事要略』では単に編纂年代を示すために「貞観」を付記したに過ぎないとする説も存在します。『本朝法家文書目録』の記述についても、三代儀式の存在を前提としたため、正確性に欠けるとの指摘があります。

編纂年代について

編纂年代については、貞観15年（873年）から19年（877年）の間とする説が有力です。これは、貞観14年に決定された荷前山陵の改定が反映されていることによります。ただし、現存の『儀式』には昌泰・延喜年間に初出する語句も含まれているため、延喜年間に一部修正が行われた可能性も指摘されています。石塚一石は、延喜13年（913年）の宣旨を『貞観儀式』の草稿を正式な儀式として編纂することを命じたものとする説を唱えていますが、この宣旨は『延喜式』編纂に関するものとする説が通説となっています。

現存の『儀式』は、貞観年間に編纂されたものを基に、後世に若干の修正が加えられたものであると考えられています。

内容について

『儀式』は全10巻77篇から構成されています。

巻一から巻五: 「祈念祭儀」「践祚大嘗祭儀」「天皇即位儀」など、主要な恒例祭儀と代始諸儀について記述されています。特に、巻二から巻四にわたる「践祚大嘗祭儀」は、践祚・大嘗祭の儀式の典拠として重要視されています。
巻六から巻八: 「元正受朝賀儀」「正月七日儀」「五月五日節儀」など、毎年の年中行事について記述されています。
巻九・巻十: 「飛駅儀」など政務に付随して行われる行事や、臨時儀式について記述されています。

『貞観儀式』の重要性

『貞観儀式』は、平安時代前期の朝廷における儀式や行事を知る上で非常に重要な資料です。特に、践祚大嘗祭の儀式に関する記述は、後世の儀式にも大きな影響を与えました。また、当時の社会や文化を研究する上で、欠かせない文献の一つと言えるでしょう。

参考文献

所功「貞観儀式」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）
所功「貞観儀式」（『日本史大事典 3』平凡社、1993年）
古瀬奈津子「貞観儀式」（『国史大辞典 7』吉川弘文館、1986年）
森田悌『日本古代律令法史の研究』（文献出版、1986年）
訓読注釈　儀式　践祚大嘗祭儀 (皇學館大学神道研究所、2012年)

関連項目

儀式 (書物)
弘仁・貞観文化
* 高松塚古墳 - その壁画の人物の持物が「貞観儀式」の元日朝賀の儀の持物の記載と酷似する。

もう一度検索