藤猪省太

藤猪省太の軌跡

藤猪省太（ふじい しょうぞう、生1970年5月11日生まれ）は、日本の柔道界で輝かしい成績を収めた選手です。彼は生涯無敗の成績を誇り、世界選手権での4連覇を達成するなど、1970年代から1980年代にかけて柔道の第一人者として名を馳せました。しかし、オリンピックには3度挑戦するも、怪我や大会のボイコットといった不運に見舞われました。現役引退後は、柔道の後進育成に情熱を注ぎ、名将として多くの選手を指導しました。

生い立ちと柔道の始まり

藤猪は香川県大川郡大内町（現在の東かがわ市）に生まれました。中学校1年生の時、身長150cm、体重50kgの平均的な体格でありながら、大相撲に憧れ柔道を始めました。彼は体を大きくするためのスポーツとして柔道を選び、昇段審査に合格したものの、年齢規定により段位の取得は保留されました。この時期に重傷を負った経験から、左組に転向し、それが後の彼のスタイルに大きな影響を与えました。

高校時代

兵庫県西宮市に転居した後、藤猪は天理高校に入学しました。天理高校は柔道名門校として知られ、日本一を目指す仲間達と共に厳しい練習に励みました。しかし、彼は卒業までに数々の敗北を経験し、日本一の栄冠には届きませんでした。それでも、彼は努力の末、1968年のインターハイでの優勝を果たし、華々しい高校生活を終えることになります。

大学時代と国際舞台への進出

卒業後、藤猪は天理大学に進学し、全日本王者から教えを受けながらさらなる技術の向上を図りました。大学時代には全日本選手権や国際大会で数々の成果を上げ、1971年のフランス国際大会では初優勝を飾ります。こうして藤猪は、国際舞台で強さを証明する選手となりました。

世界選手権での活躍

彼の柔道の頂点は1971年の世界選手権での優勝であり、さらにその後も4連覇を達成しました。藤猪は背負投や巴投を得意とし、主に中量級で圧倒的な実力を誇り、外国人選手相手にも生涯無敗を達成しました。この無敗の記録は、多くの選手との競争と彼自身の強いプライドの賜物でした。

オリンピックの悲劇

藤猪のキャリアにはオリンピックに出場できなかったという悲劇がつきまといます。1972年と1976年のオリンピックで怪我に見舞われ、1980年のモスクワオリンピックではボイコットにより出場を果たせませんでした。多くの期待が寄せられた選手でありながら、何度も不運に見舞われた彼の姿には、競技者としての苦悩が色濃く感じられます。

引退後の指導者としてのキャリア

1980年に現役を引退後、藤猪は後進の指導に情熱を注ぎました。京都産業大学や天理大学で教鞭を取り、数多くのオリンピック王者や世界王者を輩出しました。教え子となった松岡義之は、ロサンゼルス五輪で金メダルを獲得するなど、藤猪の指導力は多くの選手の成功に繋がりました。さらに、国際柔道連盟のA級審判員としても活躍し、北京五輪では女子48kg級決勝で審判を務めるなど、その経験を生かした活動も行っています。

近年の活動

2016年には天理大学を退職し、故郷の東かがわ市でふるさと大使として地域貢献に努める一方、2018年にはインドネシアの柔道代表チームの総監督を務めるなど、教育と柔道の普及に力を注いでいます。

藤猪省太は、その記録と指導を通じて日本の柔道界に多大な影響を与えてきた選手であり、今もなお多くの人々に尊敬を集めています。

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