藤田恵

藤田 恵（ふじた めぐみ）氏は、1939年に徳島県那賀郡木頭村（現在の那賀町）、那賀川源流に近い山間部で生まれました。

経歴

中央大学法学部の通信教育課程で学び、卒業後、NTT職員として勤務。労働組合である全電通の徳島県支部役員も務めたほか、毎日新聞の特約記者としても活動しました。

木頭村長として

1993年4月、藤田氏は故郷である木頭村の村長選挙に立候補。国が進める細川内ダム建設計画への反対などを主要な公約として掲げ、無投票で初当選を果たしました。村長在任中は、ダム建設に頼らない地域経済の確立を目指し、1996年には第三セクター「株式会社きとうむら」を設立。

1997年4月には再び無投票で2期目の当選。そして、2000年には国が推進していた細川内ダム建設計画を、国の巨大ダム計画としては日本の行政史上初めて、中止へと導くという歴史的な成果を上げました。この功績は、「脱ダム」の象徴的な事例として知られています。村長を務める傍ら、室蘭工業大学の非常勤講師として、河川と環境をテーマにした講義を担当するなど、多方面で活躍しました。

村長退任後と市民活動

2001年の村長選挙で3期目を目指しましたが再選には至らず、2002年に村長を退任しました。しかし、その後も藤田氏は精力的な活動を続け、ダム問題や人権問題など、様々なテーマに取り組む市民運動家としての道を歩みました。2003年には、その活動が認められ田尻賞を受賞しています。

政治活動への関心は衰えず、2004年の第20回参議院議員通常選挙では、みどりの会議の公認候補として比例区から立候補しました。党内では中村敦夫氏に次ぐ得票を得ましたが、議席獲得には至りませんでした。2005年からは水源連の顧問に就任。2007年には「9条ネット」の共同代表を務め、同年の第21回参議院議員通常選挙でも比例区から立候補しましたが、再び落選しています。

信条と思想

藤田氏の活動の根底には、日本の平和憲法である憲法9条の擁護と、自然豊かな川を守るという強い信条があります。特に河川に関しては、「河口から源流まで、鮎が自然遡上する川に戻す」という彼独自の「川を取り戻す20字定義」を掲げ、河川の生態系回復を重視しています。近年、水害発生時に「脱ダム」政策の見直しを求める声が出た際には、それは短絡的な議論であるとの見解を示しています。

また、ロシナンテ社が発行する月刊誌「むすぶ誌」に、「水問題原論（嶋津暉之著）を読む」や「百姓の想い出」、「凡夫の雑記帳」などの連載を寄稿しており、自身の考えを発信し続けています。知的な探求心も旺盛で、「空」や「唯識」、「超情報場仮説と唯識」といった仏教哲学や現代思想に関心を寄せているほか、歴史家トインビーの「歴史の研究」なども勉強しているといいます。

趣味と著作

趣味は釣りなどの川遊びや野宿、ランニング、自転車、水泳、ギターと多岐にわたります。

主な著書には、ダム問題を扱ったものや、自身の村長経験、地方分権に関するものが多くあります。

『アメリカはなぜダム開発をとめたか』（共著、築地書館）
『分権型社会を創る 市民の世紀へ』（共著、ぎょうせい）
『ゆずの里の村長奮戦記』（悠飛社）
『脱ダムから緑の国へ』（緑風出版）
* 『国を破りて山河あり』（小学館）

論文としては、「労働組合法１７条の一般的拘束力」などがあります。

藤田氏は、地方の一村長として国の巨大プロジェクトに立ち向かい、その後の市民活動を通じて、自然環境や平和、人権といった普遍的なテーマに関わり続けています。彼の活動は、草の根からの政治参加や、自然と共生する地域づくりの重要性を示す事例として、注目を集めています。

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