表章

表章の業績と生涯

表章（おもて あきら、1927年4月26日 - 2010年9月7日）は、日本能楽の研究において卓越した功績を残した学者であり、法政大学の名誉教授である。彼は能楽史や世阿弥伝書の研究で広く知られ、学問において大きな足跡を残した。また、彼の影響は次世代にも及び、長男である表きよし（1958年生まれ）も能楽研究者として活躍している。

略歴

表章は石川県金沢市に生まれ、1951年に東京文理科大学を卒業した。この年に法政大学能楽研究所の助手に就任し、1956年には文学部の専任講師に昇進し、1962年には教授に就任。その後、1991年には観世文庫の常務理事に就き、1998年には法政大学を定年退職し、名誉教授の称号を得た。

1995年には『喜多流の成立と展開』により法政大学から博士（文学）の学位を授与され、同年には角川源義賞も受賞した。2005年には瑞宝中綬章を受章し、2010年には観世寿夫記念法政大学能楽賞を受賞した。さらに、同年6月には能楽史の研究に対して恩賜賞・日本学士院賞を受賞したが、9月7日に自宅で逝去した。彼は亡くなる際に正五位の叙位を受けていた。

1960年から1963年にかけて、横道萬里雄と協力して『日本古典文学大系 謡曲集』を編纂し、能楽に関する資料の収集と保存、さらには研究にも力を注いだ。

主な著書

表章は、数多くの著書を残し、その中には以下のようなものがある。

• - 『鴻山文庫本の研究 謡本の部』（1965年、わんや書店）
• - 『能楽史新考 1』（1979年、わんや書店）
• - 『能楽と奈良』（1980年、奈良市）
• - 『能楽史新考 2』（1986年、わんや書店）
• - 『喜多流の成立と展開』（1994年、平凡社）
• - 『大和猿楽史参究』（2005年、岩波書店）
• - 『観世流史参究』（2008年、檜書店）
• - 『能楽研究講義録 六十年の足跡を顧みつつ』（2010年、笠間書院）
• - 『昭和の創作「伊賀観世系譜」―梅原猛の挑発に応えて』（2010年、ぺりかん社）

これらの著作は、能楽の歴史や構造、流派に関する重要な研究を提供している。また、彼が校注や編纂に関与した作品も多くあり、能楽や古典文学に対する情熱が伺える。

研究成果

表章の研究は、能楽の歴史的理解を深めることに寄与した。特に彼の著書である『喜多流の成立と展開』は、日本の伝統芸能である能楽の流派に関する重要な知見を提供している。さらに、『昭和の創作「伊賀観世系譜」』では、観阿弥出身地に関する偽情報を論証し、能楽研究の信頼性を高める役割を果たした。

表章の遺した業績は、彼の死後も能楽研究の基盤として多くの研究者に影響を与え続けている。彼の豊かな知識と多彩な成果は、日本の伝統文化に対する理解を一層深める手助けとなっている。

もう一度検索