西川祐尹

西川祐尹：江戸時代の多彩な才能を持つ京都の浮世絵師

西川祐尹（にしかわ すけただ）は、江戸時代の京都で活躍した浮世絵師です。正確な生年は不明ですが、宝暦8年12月17日（1759年1月15日）に没しました。

祐尹は、同じく浮世絵師として知られる西川祐信を父に持ちます。幼名は、大助または伊織、通称は西川主税で、得祐斎、文生堂という号も用いました。父と同じく、公家の西園寺家に仕えながら、絵師としての活動も精力的に行っていました。

彼の作品は、版本の挿絵と肉筆の美人画が中心です。版本挿絵では、『絵本八重桜』、『絵本鏡百首』、『絵本勇士艸』、『絵本響の瀧』、『絵本みつの友』、『絵本面美花』、『絵本氷面鏡』など、多数の書籍を手がけています。これらの作品は、当時の出版文化を反映した貴重な資料となっています。

肉筆画においては、東京国立博物館所蔵の「男舞図」や、ニューオータニ美術館所蔵の「立姿美人図」などが知られています。「男舞図」には、「文華堂祐信嫡男西川主税祐尹筆」の落款と、西川祐尹を示す印が押されています。一方、「立姿美人図」は、享保16年（1731年）刊行の『絵本常盤草』上巻の人物図様を参考に描かれたと推測されています。さらに、個人蔵の「春画帖」12図は、父・祐信の作品を踏襲しつつ、祐尹自身の独自の表現も加えられています。春画帖の第1図には、父・祐信の号である「文華堂」を含む関防印が押されており、祐信の後継者として自覚的に活動していたことが伺えます。

祐尹は絵師としての活動に加え、儒医にも関心を抱いており、『雀論語』という著作を残したと伝えられています。これは、彼の多様な才能の一端を示すものです。

彼の没年については、複数の史料に食い違いがありました。『名人忌辰録』や『続平安名家墓所一覧』には宝暦12年（1762年）8月25日没、享年57歳と記載されています。しかし、大橋乗保と林美一の調査によって、子孫の西川家に伝わる系図と過去帳から、宝暦8年12月17日没であることが判明しました。享年は不明です。墓所は京都三条大宮の妙泉寺、法名は徳本院積善浄運居士です。

弟の西川祐肖も絵師でしたが、延享元年（1744年）に33歳で亡くなっています。西川家は祐尹の孫の代に家業を医業へと転換し、絵師としての系譜は途絶えました。

西川祐尹の作品は、江戸時代の浮世絵や出版文化を知る上で重要な資料であり、その多様な才能と生涯は、後世に多くの示唆を与え続けています。彼の作品は、現在でも美術館や個人コレクターによって大切に保管・鑑賞されています。今後の研究により、さらに多くの作品や情報が明らかになる可能性も期待されます。

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