西酒造

西酒造株式会社

西酒造株式会社は、鹿児島県日置市吹上町与倉に本社を構える、長い歴史を持つ焼酎製造業者です。その創業は江戸時代後期の弘化2年（1845年）に遡り、以来、鹿児島の地に根差した焼酎造りを行ってきました。現在の代表取締役社長である西陽一郎氏は8代目に当たり、東京農業大学で醸造学を修めた後、自らも杜氏として現場で研鑽を積むなど、伝統を継承しつつも品質向上に情熱を注いでいます。

焼酎造りの哲学と原料へのこだわり

西酒造の焼酎は、厳選された原料と伝統的な製法、そして革新への探求心によって生み出されます。主要な芋焼酎においては、「黄金千貫」「綾紫」「白豊」「紅東」といった、個性が異なる多様な品種のさつまいもを使用しています。これらの芋は、契約農家で丁寧に栽培されたものなど、品質にこだわって選ばれています。また、米麹に関しても、黄麹、黒麹、白麹といった異なる種類の麹を使い分けることで、酒質に多様な個性を与えています。さらに、芋麹を用いた「芋麹全量」シリーズなど、原料の特性を最大限に引き出す独自の取り組みも行っています。蒸留は主に単式蒸留を採用し、原料本来の風味を大切にしています。

代表銘柄と系譜

同蔵の代表銘柄として広く知られているのが「薩摩宝山」です。この銘柄名は、島津氏の祖である島津忠久が連れていたとされる祈祷僧、宝山検校に由来すると伝えられています。薩摩宝山は、平成21酒造年度の鹿児島県本格焼酎鑑評会で総裁賞代表を受賞するなど、その品質は県内でも高く評価されています。薩摩宝山シリーズには、「福寿」（長期熟成）、「芋麹全量」、「綾紫・芋麹全量」、「黒麹仕込」、「三段仕込」（綾紫100%）、「紅」（地元産綾紫使用）、「限選」（地元産黄金千貫使用）など、多様なラインナップがあります。

また、「宝山」の名を冠する他の主要銘柄として、黄麹を使用した華やかな香りの「富乃宝山」、黒麹によるどっしりとした味わいの「吉兆宝山」、白麹による柔らかな口当たりの「白天宝山」といった人気銘柄があります。これら「宝山」シリーズに加え、特定の芋品種（綾紫、白豊、紅東）の特徴を際立たせた無濾過・無調整の「宝山」シリーズや、「綾紫印」「白豊印」「紅東印」なども製造しています。

芋焼酎以外にも、麦焼酎「一粒の麦」「炙麦」や、長期熟成による琥珀色と芳醇な風味が特徴の芋焼酎「天使の誘惑」、初留取り原酒である高アルコール度数の「万暦」、新酒の風味を閉じ込めた無濾過・無調整の「初芋蒸」、白麹仕込みの「貴醸仕込み 誉蔵」など、バラエティ豊かな製品を展開しており、それぞれが独自の個性と品質を持っています。

国内外での高い評価

西酒造とその製品は、国内外のコンクールで数々の栄誉に輝いています。特筆すべきは、2014年にインターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション（IWSC）において、「アジア最優秀蔵元（Asia Pacific Spirits Producer）」に認定されたことです。これは、蔵全体の焼酎造りのレベルの高さが国際的に認められたことを意味します。

個別の銘柄においても、「天使の誘惑」が2014年のIWSCで最高金賞と部門最高賞である“トロフィー”をダブル受賞するなど、極めて高い評価を得ています。「万暦」も同年に金賞を受賞しています。また、「薩摩宝山 白麹仕込み」は2011年のモンドセレクションで最高金賞に輝き、その後も金賞を連続受賞しています。この他にも、「薩摩宝山 黒麹仕込み」「紅薩摩宝山 黒麹仕込み」「吉兆宝山 黒麹仕込み」「富乃宝山 黒麹仕込み」「白天宝山 黒麹仕込み」「薩州宝山」「宝山 芋麹全量」「綾紫芋麹全量」「綾紫印」「白豊印」「紅東印」といった多くの銘柄が、2011年のモンドセレクションで金賞を受賞しており、その製品群全体が高い品質を維持していることが証明されています。

鹿児島県文化センターが「宝山ホール」として親しまれているのは、西酒造が命名権を取得したことによるものです。このように、地域文化への貢献も行いながら、西酒造は伝統と革新を融合させた焼酎造りを通じて、多くの焼酎ファンを魅了し続けています。

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