貸借対照表

貸借対照表とは

貸借対照表（たいしゃくたいしょうひょう）は、企業のある時点における財政状態を示す財務諸表の一つです。英語ではバランスシート（Balance Sheet: B/S）と呼ばれ、国際会計基準（IFRS）では財政状態計算書（statement of financial position）とも呼ばれます。

概要

貸借対照表は、複式簿記の原則に基づき、損益計算書など他の財務諸表と同時に作成されます。企業の株主、債権者、その他利害関係者に対して、経営状態に関する情報を提供することが目的です。株式会社の場合、決算公告として官報や新聞、インターネット上で公開されることが義務付けられています。通常、開業時、決算時、清算時に作成され、月次で作成されることもあります。また、決算前には中間貸借対照表が作成されることもあり、会社更生や破産手続きにおいては、時価基準で作成された非常貸借対照表が用いられることもあります。

貸借対照表は、ある時点における企業の資産、負債、そしてそれらの差額である純資産の額を示します。しかし、現代の企業活動においては、継続企業の前提の下で、貸借対照表に計上される資産や負債の額が、必ずしも企業の財産状況をそのまま反映しているわけではありません。

例えば、機械や建物などの有形固定[[資産]]は、取得原価で計上され、減価償却を通じて費用化されます。このため、貸借対照表に計上される償却性有形固定[[資産]]の金額は、将来の減価償却費を一時的に記録するためのものと捉えることができます。つまり、貸借対照表は、期間損益計算を適切に行うために、収支と損益の期間帰属のずれを調整する役割も担っています。

真に企業の財政状態を示すためには、すべての資産と負債を時価で評価し、繰延資産のような財産性のない資産は計上しないようにする必要があるかもしれません。しかし、現在の貸借対照表は、期間損益計算の観点も重視しているため、収益費用アプローチと資産負債アプローチを折衷的に取り入れていると言えます。

バランスシートの語源

バランスシートという英語は、ラテン語で天秤を意味する「libra bilanx」に由来します。これは、貸借対照表が左右に分かれており、左側の「借方（debit）」と右側の「貸方（credit）」が釣り合っていることに由来します。ヨーロッパ各国語でも同様の語源を持つ言葉が用いられています。

構造

貸借対照表は、借方（左側）に「資産の部」、貸方（右側）に「負債の部」と「純資産の部」が配置されています。

資産の部：企業が保有する資産の総額が表示されます。現金、預金、有価証券、土地、建物などが含まれます。
負債の部：企業が抱える債務の総額が表示されます。買掛金、借入金、社債などが含まれます。
純資産の部：株主が拠出した資本金、資本剰余金、利益剰余金などが表示されます。企業の自己資本を示します。

資産の部と負債の部は、一般的に流動性の高いものから低いものへと順に記載されます（流動性配列法）。ただし、電力会社のように固定[[資産]]が多い企業など、特別な会計規則が適用される場合は、固定性配列法が用いられます。

借方金額の合計と貸方金額の合計は必ず一致します。これにより、総資産の資金源泉が他人資本（負債）なのか、自己資本（純資産）なのかを把握することができます。

借方と貸方の理由

貸借対照表を含む帳簿は、もともと金融業のために考案されました。金融機関では、預金は借入金とみなされるため、帳簿の右側（貸方）に預金額が記入されます。一方、一般企業では、預金は貸付金となるため、帳簿の左側（借方）に記入されます。このため、日本では帳簿欄の呼称も「借方」「貸方」と金融機関とは逆になりました。欧米では、バランスシートの帳簿欄の呼称も金融業の視点に基づいています（借方：引き落とし、貸方：預け入れ）。

法規制

株式会社は、定時株主総会の終了後、遅滞なく貸借対照表を公告することが義務付けられています（会社法440条）。現在の決算公告では、資産から負債を差し引いたものが純資産として表示されます。

主要科目

貸借対照表の各区分の表示は、会社計算規則で定められています。

貸借対照表と経営指標

貸借対照表は、企業の経営状態を分析するための重要な情報を提供します。以下は、貸借対照表をもとに算出される主な経営指標です。

流動比率：流動資産 ÷ 流動負債 × 100（企業の短期支払能力を測る指標、200%以上が目安）
当座比率：当座資産 ÷ 流動負債 × 100（企業の即座の支払能力を測る指標、100%以上が目安）
固定比率：固定[[資産]] ÷ 自己資本 × 100（自己資本に対する固定[[資産]]の割合、100%未満が目安）
固定長期適合率：固定[[資産]] ÷ （固定負債＋自己資本）（長期的な視点での支払能力を測る指標、100%未満が目安）
資本固定比率：自己資本 ÷ 固定[[資産]] × 100（自己資本の固定化の割合、100%以上が目安）
負債比率：負債 ÷ 自己資本 × 100（自己資本に対する負債の割合、100%未満が目安）
資本負債比率：自己資本 ÷ 負債 × 100（自己資本に対する負債の適性を測る指標、100%以上が目安）
自己資本利益率：純利益 ÷ 自己資本 × 100（収益力を測る指標、高いほど良い）
自己資本比率：自己資本 ÷ 総資本 × 100（経営の安定性を測る指標、40%以上が目安）

これらの指標を用いることで、企業の財務状況や経営状態をより深く理解することができます。

まとめ

貸借対照表は、企業にとって非常に重要な財務諸表であり、その内容を正しく理解することは、企業の健全な経営を支える上で不可欠です。企業の財政状態を把握し、経営戦略を立てるための基礎となる情報を提供します。

参考文献

『日本は世界1位の政府資産大国』（講談社、2013年10月） 高橋洋一 ISBN 978-4062728232

外部リンク

企業会計原則 第三 貸借対照表原則　一 貸借対照表の本質

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