足利市立美術館

足利市立美術館：地域に根ざした文化拠点の歩み

栃木県足利市中心部にある足利市立美術館は、1994年4月の開館以来、地域に密着した活動を展開する美術館として知られています。日本で類を見ない集合住宅との併設というユニークな形態も特徴の一つです。

美術館は、企画展を軸に、読売新聞社などとの協賛による展覧会も開催。川島理一郎や大山魯牛など、足利市や両毛地域にゆかりのある芸術家の作品を数多く収蔵し、地域文化・芸術の活性化に貢献しています。

財政とコレクション：市民の支えが不可欠

年間数10万円という限られた予算の中で、美術館の運営は常に財政状況との戦いでもあります。そのため、市民からの寄贈は、コレクションの充実にとって極めて重要な意味を持っています。特に2009年度には、日本を代表するリトグラフ作家・阿部浩の作品を中心とした、388点にのぼる貴重な作品群（評価額5900万円相当）が市民から寄贈され、美術館の財産を大きく増強しました。この出来事は、地域住民の美術館に対する深い理解と支持を示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

指定管理者制度導入と見直し：柔軟な運営への模索

2006年度、地方自治法改正を受け、足利市は指定管理者制度を導入。これにより、美術館の運営は財団法人足利市みどりと文化・スポーツ財団に委託されました。しかし、3年間の委託期間では学芸員の育成や中長期的な企画展の運営が困難であるという課題が浮き彫りになりました。そのため、2009年度の更新時には、市営に戻されるという決断がなされました。この決定には、数年ごとの運営主体変更がもたらす運営の不安定性や、市民の信頼確保、更なる作品寄贈への影響といった懸念が背景として存在していたと考えられます。

「山姥切国広」公開と刀剣女子の来場：予想外のブーム

2017年3月4日から4月2日にかけて開催された「山姥切国広」の一般公開は、美術館に予想外の賑わいをもたらしました。刀剣乱舞ファン、特に「刀剣女子」と呼ばれる女性ファンを中心に約37800人の来場者を集め、大きな話題となりました。この出来事は、美術館が地域住民だけでなく、より広い層の人々に親しまれる可能性を示唆するものでした。

アクセス情報

美術館へのアクセスは良好です。JR両毛線足利駅、東武伊勢崎線足利市駅からは徒歩約7分。また、足利市生活路線バスを利用し、「美術館前」で下車すれば、すぐ目の前に美術館があります。栃木県道116号足利市停車場線（中橋通り）沿いに位置し、無料駐車場も完備しています。

まとめ

足利市立美術館は、限られた予算の中で、地域住民の協力を得ながら、独自の運営スタイルを確立してきました。指定管理者制度導入・見直しを経て得られた経験や、予想外の来場者増加といった出来事は、今後の美術館運営にとって貴重な財産となるでしょう。これからも、地域文化の宝庫として、その役割を担い続けることが期待されます。

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