道祖王

道祖王（ふなどおう）の生涯

道祖王は、奈良時代の日本において特異な運命を持った皇族で、天武天皇の孫にあたる一品・新田部親王の子です。彼は霊亀3年（717年）ごろに生まれ、その名は皇族としての特権と期待に伴うものでしたが、彼の人生は波乱に富んでいました。

幼少期から立太子まで

道祖王の母についての記録は残っておらず、詳細は不明ですが、父・新田部親王は天武天皇の直系の子として、名を馳せていました。天平7年（735年）には新田部親王が薨去し、道祖王は王子としての地位を一層意識するようになったことが推測されます。天平9年（737年）には、その際の叙位任官で従四位下に直叙され、政治家としての活動を始めました。

その後、道祖王は天平10年（738年）には散位頭に、天平12年（740年）には従四位上へと昇叙されていきます。さらには、大膳大夫や中務卿といった重要な地位も歴任し、政治的な迫力を増していきました。彼の和歌が『万葉集』に記載されていることから、文学にも一定の関心を持っていたことが伺えます。

皇太子としての立場

天平勝宝8年（756年）、道祖王は孝謙天皇によって皇太子に立てられました。この昇進は聖武上皇の遺志に基づくものでしたが、その直後から彼に対する状況は急変します。翌年の天平勝宝9年（757年）3月29日には、孝謙天皇が道祖王を廃太子とする提案を行いました。その理由として、彼の不適切な行動や反抗的な態度が挙げられました。

道祖王の廃位は、当時の政争の一環と考えられています。この決定に対し、一部の大臣は反発を示しましたが、結局道祖王はわずか1年足らずで太子の地位を失うこととなり、歴史上初めて皇太子の地位から廃位されたケースとなりました。

最期の運命

道祖王の運命はさらに悲劇的な方向へ向かいます。同年の6月28日、橘奈良麻呂の乱が起こり、道祖王はその巻き添えとなってしまいました。囚われの身となった彼は、平城獄に移され、厳しい拷問を受けることとなります。獄中での拷問に耐えかねた道祖王は、名を「麻度比」と改名させられ、ついには獄死しました。彼の享年は41歳でした。

道祖王の墓は、現在の佐賀県武雄市橘町に残されており、今でも彼の名前は歴史の中で語り継がれています。道祖王は、厳しい運命に翻弄されながらも、歴史の中に足跡を残した人物です。彼の生涯は、帝の重責に対する期待と、権力闘争の残酷さを物語っています。

官歴

道祖王の官歴は以下の通りです。

• - 天平9年（737年） 9月28日：従四位下（直叙）
• - 天平10年（738年） 閏7月7日：散位頭
• - 天平12年（740年） 11月21日：従四位上
• - 天平20年（748年） 4月22日：山作司
• - 時期不詳：大膳大夫
• - 時期不詳：中務卿
• - 天平勝宝8年（756年） 5月2日：立太子
• - 天平勝宝9年（757年） 3月29日：廃太子
• - 天平宝字元年（757年） 7月4日：麻度比と強制改名

道祖王の人生は、奈良時代の日本における皇族の運命を象徴するものであり、政治的な力関係の変動を如実に示しています。彼の後に続く皇族たちは、彼の運命から多くの教訓を得たことでしょう。

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