郷土玩具

日本の郷土玩具：地域文化を映す伝統工芸品

古来より日本各地で作られてきた郷土玩具は、単なる玩具ではなく、地域の伝統工芸品としての側面も持ち、その土地の歴史や文化を色濃く反映した工芸品です。地域の特色ある素材や技法を用いて作られ、祭礼や行事、信仰と深く関わっているものも多く存在します。動物や地域固有のモチーフをモデルにしたものや、観賞用として作られたものなど、その種類は多岐に渡ります。

郷土玩具の定義

郷土玩具の定義は、研究者によって若干異なります。稲垣武雄は、祭礼や行事において授与・販売され、観賞に耐えうる大きさのものを郷土玩具と定義しました。一方、山田徳兵衛は、地方で考案・生産され、その地方の特色を持つ玩具を郷土玩具と定義しています。梅田之は、古くから作られてきた伝統的な玩具に加え、新たに作られた玩具（創生玩具）も存在すると指摘しており、郷土玩具は基本的に古い伝統を持つことを条件とされることが多いとしています。

これらの定義を総合的に見ると、郷土玩具とは、以下の特徴を備えた玩具と言えるでしょう。

地域性: 特定の地域で古くから作られてきた、その地域特有の文化や風習を反映している。
伝統性: 長い歴史と伝統を持つ、もしくは伝統的な技法を用いて作られている。
工芸性: 巧みな技術を用いて作られており、観賞価値も高い。
機能性: 玩具としての機能に加え、祭礼や行事などで用いられるものもある。

代表的な郷土玩具

日本全国には数多くの郷土玩具が存在します。以下はその一部です。地域によって多様な表現方法やモチーフが見られることが特徴です。

北海道: ニポポ、鷲の爪輪
青森県: 鳩笛、ずぐり独楽、南部の馬玩具、八幡駒
岩手県: チャグチャグ馬
宮城県: 仙台張子、堤人形、鳴子こけし、遠刈田こけし、木下駒
秋田県: なまはげ人形、中山人形、十二支土鈴、八橋人形
山形県: 御殿まり、お鷹ポッポ、いづめこ人形、相良人形
福島県: 土湯こけし、赤べこ、起き上がり小法師、三春駒、たつぐるま
栃木県: きぶな
群馬県: 高崎だるま
東京都: 今戸人形、すすきみみずく、犬張子、江戸奴凧、飛んだり跳ねたり
神奈川県: 開港人形
新潟県: 金魚台輪、三角だるま
富山県: 富山土人形
石川県: 加賀人形、米食い鼠
長野県: あけび鳩車、蘇民将来、布引馬、手まり
山梨県: かなかんぶつ
静岡県: 静岡張子
岐阜県: さるぼぼ
三重県: 多度の弾き猿
京都府: 伏見人形
大阪府: 神農の虎、喜々猿
兵庫県: 神戸人形
奈良県: 吉野雛
和歌山県: 瓦猿・寝牛、米搗き車
香川県: 高松嫁入り人形
愛媛県: 姫だるま
鳥取県: 岩井挽物人形
山口県: ふぐ笛
島根県: 張子虎、出雲張子
岡山県: 作州牛
福岡県: 孫次凧
長崎県: むくりこくり、佐世保独楽
宮崎県: 鶉車、のぼりざる
熊本県: おばけの金太、肥後こま、きじ馬、肥後まり、肥後てまり、南蛮てまり、木葉猿
佐賀県: 能古見人形
鹿児島県: 薩摩首人形
沖縄県: 沖縄張子

これらの玩具は、それぞれの地域の風土や文化、信仰などを反映した独特のデザインや制作技法が用いられており、日本の多様な文化を象徴しています。

郷土玩具記念日

一般社団法人日本記念日協会では、郷土玩具に関する記念日が制定されています。例えば、「黄ぶなの日」(9月27日)や「赤べこの日」(11月3日)などがあります。これらの記念日は、郷土玩具への関心を高め、その保護・継承を促進する役割を果たしています。

参考文献

郷土玩具に関する様々な書籍が出版されています。これらを通して、郷土玩具の歴史や文化、制作技法などをより深く知ることができます。

終わりに

郷土玩具は、日本の伝統文化を理解する上で重要な要素の一つです。その多様性と奥深さは、日本の豊かな文化遺産を示しています。今後も、郷土玩具の保護と継承、そしてその魅力を発信していくことが重要です。

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