都名所図会

都名所図会

『都名所図会』（みやこめいしょずえ）は、江戸時代の後期に発表された京都の地誌であり、その内容は御所や寺社、名物、伝説に至るまで多岐にわたります。1780年（安永9年）に初版が刊行されて以降、多くの読者に支持され、1787年（天明7年）には続編の『拾遺都名所図会』も登場しました。この書物は、秋里籬島の著作で、竹原春朝斎が挿絵を担当しており、全6巻11冊から構成されています。

内容の概要

『都名所図会』は、名所の解説だけでなく、一般の人々にも知られていない隠れた名所や、さまざまな伝説についても記載されており、各地の風俗や文化を感じることができます。著者は実際に現地を訪れ、視察した結果を基に作品をまとめているため、信頼性が高いと言えるでしょう。さらに、盛りだくさんの挿絵、特に鳥瞰図や、当時の庶民の生活を描いた風俗図は、視覚的に豊かな情報を提供し、読者の興味を一層引き立てています。

この書の範囲は、巻1から3では主に京都市内に焦点を当てており、そこにある名所や施設が紹介されています。一方、巻4と5では京都近郊の山城地域について、宇治や八幡などのルポタージュが展開されており、地域の魅力や歴史が語られています。これは、先行した他の文献、特に「京童」や「京雀」などに倣った形とも言えます。

影響と評価

『都名所図会』は、名所図会の刊行における重要な基礎を築くものであり、以降の多くの地誌や風俗画集へも多大な影響を与えました。書物に収められた内容は、観光ガイドの先駆けとも言えるもので、当時の京都を訪れる人々にとって貴重な情報源として機能しました。挿絵は特に名所の雰囲気を伝える重要な要素であり、その描写は時代を超えて多くの人々に愛され続けています。

出版本と校訂

『都名所図会』に関する出版物も多く、1999年には市古夏生・鈴木健一による校訂版『新訂 都名所図会』が全5巻で刊行されています。また、竹村俊則の校注によるものが角川文庫からも出ており、その内容は一般にも広く普及しています。多くの関連書籍も存在しており、例えば、京都の名所を取り扱った『都林泉名勝図会』や、東海道の名所を纏めた『東海道名所図会 新訂』などがあります。

結論

『都名所図会』は、江戸時代の文化や風俗を知る上で欠かせない作品であり、京都の名所や人々の生活を理解するための貴重な資料として位置付けられます。当時の風景を描いた挿絵も相まって、読者に深い感動を与え、歴史的価値が高い一冊と言えるでしょう。

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