野暮

野暮（やぼ）

「野暮」とは、洗練されていない様子を指す言葉であり、「いき」という概念の反対の性質を持っています。本来は風流や洗練を重んじる文化において、あまりにも素朴であることを揶揄する際に用いられてきました。特に江戸時代の文脈では、東京の江戸っ子たちが地方出身者を「野暮」と評したり、落語や川柳でこの概念が扱われたりしました。

語源の考察

「野暮」の語源にはいくつかの説があります。一つは、「田舎者」を意味する「野夫（やぶ）」が訛ったという説です。また、薮（やぶ）という言葉が示すように、事情や状況を把握していないことから派生したとされることもあります。さらに雅楽の楽器である笙に由来する、音の出ない管が「やぼ」とされるという珍しい説も存在します。

他にも、武蔵国の谷保天満宮が語源とする説もあります。これは、蜀山人の狂歌が根拠にされているものの、実際にはその語が使われる以前から「野暮」は存在していたため、後世の付会と考えられています。

文化的背景

落語や川柳においては、地方出身の侍などが「野暮」とされる代表例とされており、江戸時代の人々の間では意識的にこの言葉が使われていました。「奥の細道」でも、著者が「野夫ともいへども」と記しているように、情けを欠いた行動が「いき」とは反対の意味を持つとして描かれています。つまり「野暮」という言葉は、文化的な洗練さや教養の欠如を示すものとされてきたのです。

現代の「野暮」

現代においても「野暮」という言葉は使用されていますが、その意味合いは多岐にわたります。特に派手な服装や金銭への固執、または説明がだらだらと長いことを指して使われることが多いです。実用性を重視せずに見た目だけを重視する傾向も「野暮」とされます。時代遅れなファッションが流行に乗れず、ただの野暮として扱われることもあります。

一方で、キッチュなスタイルが「野暮」と似ている場合もありますが、奇妙さに特化したデザインが肯定されることがあるため、両者は一概には比較できません。江戸時代の感覚では、「気障」といった別の言葉が使われることがあり、くどくどしさが求められない場面ではこちらが当てはまります。

具体的事例

「野暮」という概念は、無駄な看板や宣伝を行うことや、必要以上に規則にとらわれる役人の態度を示す例として取り上げられます。また、男女の関係において配慮が欠ける場合や、訪問時に「野暮用で」といった表現がされることもあります。過剰な準備や多機能なアイテムが「シンプルさ」と対比されることで、野暮と見なされることもあります。

これは、洗練された表現やスタイルが重要視される文化において、自己を持ち味として表現するということが、いかに大切であるかを示しています。

もう一度検索