野本博

野本 博（のもと ひろし）

野本 博は、1947年（昭和22年）1月に滋賀県彦根市で生まれた日本の俳優です。本名は芸名と同じく野本博。

生い立ちと俳優への道

父親が長野県、母親が熊本県の出身という背景を持つ野本博は、3歳の時に家族とともに北海道へ移り住みました。高校は北海道立天塩高校を卒業し、1965年（昭和40年）に上京して千葉工業大学工業化学科に入学。大学で学ぶ傍ら、1968年（昭和43年）に劇団東芸の研究生となり、俳優の道を志しました。大学卒業後の1970年（昭和45年）、日本テレビで放送されたホームドラマ『うちのおとうさん』に板前のサブ役でレギュラー出演し、本格的な俳優デビューを飾りました。

テレビドラマでの活躍

テレビドラマにおいては、デビュー作以降、様々なジャンルの作品に出演しました。特に時代劇や刑事ドラマでの出演が多く、テレビ朝日系列の長寿番組『特別機動捜査隊』には1969年から1973年にかけて複数回ゲスト出演しています。また、日本テレビの刑事ドラマ『太陽にほえろ!』の初期エピソードにも複数回登場しました。1973年には円谷プロダクション制作のウルトラシリーズにも参加し、『ウルトラマンA』や『ウルトラマンタロウ』に村人や船員役でゲスト出演。特撮番組では『ファイヤーマン』でグリーン星人を演じるなど、その活躍は多岐にわたりました。

その後も、テレビ時代劇の代表格であるフジテレビの『江戸の旋風』シリーズや、テレビ朝日の『特捜最前線』といった人気シリーズに頻繁にゲスト出演し、物語を引き締める脇役として確かな存在感を示しました。NHKの大河ドラマ『信長 KING OF ZIPANGU』（1992年）や『琉球の風』（1993年）、日本テレビの『火曜サスペンス劇場』では刑事役や捜査本部長役を演じるなど、現代劇やサスペンスドラマでも活躍の場を広げました。

舞台活動の軌跡

野本博の俳優活動において特筆すべきは、その膨大な舞台出演歴です。劇団東芸の本公演への出演を皮切りに、1970年代後半からは特に萬屋錦之介や北大路欣也といった時代劇スターの特別公演、あるいは山本富士子、池内淳子、浜木綿子など名女優たちの座長公演に数多く参加しました。歌舞伎座、明治座、御園座、帝国劇場、南座といった大劇場の舞台に立ち、歴史上の人物から市井の人々まで、多様な役柄を演じました。

萬屋錦之介特別公演では、『赤穂浪士』『幡随院長兵衛』『大江戸五人男』『宮本武蔵』など、代表作に何度も出演し、重要な役どころを担いました。また、向田邦子名作劇場『阿修羅のごとく』やアガサ・クリスティー原作の『そして誰もいなくなった』など、現代劇やミステリーの舞台にも出演しています。これらの舞台活動は2000年代以降も続き、2019年には三越劇場での『マクベス』、2021年にはニッショウホールでの『リア王・マクベス』に出演。2024年にも三越劇場での『リア王2024』への出演が控えるなど、近年も精力的に舞台に立ち続けています。

人物と地域での活動

俳優としての顔を持つ一方、野本博には俳優以外の多様な側面もあります。趣味はギター演奏と歌唱。若かりし頃の1971年頃には、俳優の森山周一郎が率いる草野球チーム「東京ライターズ」に所属し、スポーツを楽しむ一面も見せていました。

私生活では、1975年（昭和50年）に「子供を田舎で育てたい」という思いから、当時居住していた東京都杉並区荻窪から埼玉県春日部市への移住を決断しました。移住後は地域活動にも深く関わり、地元の祭友会会長を務めたほか、町会の理事を歴任。2012年（平成24年）からは町会の副会長や事務局長を務めるなど、地域社会の一員として貢献しています。俳優としての華やかなキャリアと並行して、地域に根差した堅実な生活を送っていることも、野本博という人物の一つの特徴と言えるでしょう。

長年にわたりテレビドラマと特に多数の舞台で活躍し、観客に深い印象を残してきた野本博は、俳優としての確かな実力に加え、地域社会への貢献も行う、多才な人物です。

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