ファイヤーマン

ファイヤーマン：怪獣特撮の原点回帰と低迷、そして革新的な試み

1973年1月7日から同年7月31日にかけて、日本テレビ系列で放送された特撮テレビ番組『ファイヤーマン』。円谷プロダクションと萬年社の共同制作による、全30話のシリーズです。主人公は、巨大な変身ヒーロー、ファイヤーマン。英語圏では「Magma Man」と呼ばれることもありますが、これは「fireman」が英語で「消防士」を意味するためです。

製作背景とコンセプト

『ウルトラマンタロウ』や『ジャンボーグA』と同様に、円谷プロ創立10周年記念番組として企画されました。同時に、日本テレビ開局20周年も記念する作品でもありました。制作当初のコンセプトは「怪獣特撮番組の原点に還る」こと。本格的なSF作品への回帰が目指されました。企画書には「海と地底への挑戦」と記され、コスト面から敬遠されがちだった海底や地底での撮影を、円谷プロの特撮技術を駆使して実現しようという意欲的な目標が掲げられていました。

しかし、現実の視聴率は平均6～7％台と低迷しました。これは、同時間帯に放送されていた人気番組『サザエさん』の存在が大きく影響したと考えられています。

視聴率低迷と路線変更

視聴率の低迷を受け、番組はテコ入れを余儀なくされました。第13話からは放送枠が火曜日19時台に変更され、オープニングタイトルバックも一新。アバンタイトルにはファイヤーマンと怪獣の戦闘シーンが挿入されるようになりました。さらに、第17話と第18話では九州でのロケを行い、新たなアイテム「ファイヤーブレスレット」と新必殺技「ファイヤーダッシュ」が登場しました。

その後も、コミカルな宇宙怪獣を登場させたり、山村を舞台にした牧歌的な描写を増やすなど、様々な試みが続けられました。しかし、視聴率は改善せず、作品の独自性も徐々に薄れていく結果となりました。結局、全30話をもって番組は終了しました。

企画・制作

本作品は、円谷プロと萬年社の共同制作です。両社の協業のきっかけは、萬年社と東宝が制作発表した特撮番組『レインボーマン』でした。円谷プロが先に「レインボーマン」を商標登録していたことから、萬年社は円谷プロに商標権の移譲を打診。このことが両社の交流へと繋がり、新番組制作の話へと発展していったのです。

当時の円谷プロ社長と萬年社プロデューサーの意見交換を経て、円谷プロプロデューサーは一晩で『ファイヤーマン』の企画案を完成させました。東宝ビルトの使用に余裕がなかったため、スタッフルームと撮影には大映東京撮影所が使用されました。企画段階では「レッドマン」や「レッドスティック」、「G・S・S」といった名称が検討されていたことも分かっています。

キャスティング

レギュラー陣のキャスティングでは、岸田森の起用がまず決定。その後、プロデューサーの意向で他のキャストが選出されました。主人公・岬大介役には、誠直也がオーディションで選ばれたとされていますが、誠自身は記憶にないと語っています。誠は、岸田森から演技指導を受け、大きく成長したと回想しています。葉山マリ子役の栗原啓子は本作が女優デビュー作でした。

ストーリー

地球に異変の兆候が現れ始め、絶滅したはずの恐竜が怪獣となって出現します。地底文明アバン大陸の長老たちは、危機を救うため、若者ミサキーを地上へ送ります。ミサキーは「岬大介」と名乗り、怪現象を調査する学者として活動を始めます。

ある日、海で怪現象が発生。岬は長老から与えられたファイヤースティックでファイヤーマンに変身し、怪獣を倒します。この活躍を受け、政府は地球科学特捜隊SAFを結成。岬は大介はSAF隊員として、そしてファイヤーマンとして地球の平和のために戦うことになります。

登場人物と組織SAF

登場人物の名前には、「岬」、「海野」、「水島」、「千葉」、「葉山」など、水に関係する名前が多いことが特徴です。

岬 大介: アバン大陸の末裔。ファイヤースティックでファイヤーマンに変身する。
海野 軍八: SAF隊長。海洋学者。
水島 三郎: SAF副隊長。宇宙工学者。
千葉 太: SAF隊員。工学者。
* 葉山 マリ子: SAF隊員。コンピュータープログラマー。

ファイヤーマン

1万1500年前、アバン大陸は小惑星の衝突で海底に沈みましたが、住民は地底に移住。高度な科学力でマグマエネルギーを利用した社会を築いていました。アバン大陸の末裔である岬大介は、オーザからファイヤースティックを与えられ、ファイヤーマンに変身する能力を得ます。

ファイヤーマンは、赤いボディと大きな目が特徴。マグマエネルギーを力の源とし、体温は1000度にも及びます。海中での戦闘を得意としており、時間や空間を超越した能力も持ちます。しかし、戦闘では苦戦する場面も多く見られました。

メカニックと怪獣

SAFは、シーマリン、マリンゴン、マリンブル、モグリアン、マリンカーといった様々なメカニックを使用します。登場怪獣は、初期は恐竜をモチーフとしたものが多いですが、視聴率低迷に伴い、宇宙人や宇宙怪獣も増加しました。

スタッフ・キャスト・主題歌

スタッフには、円谷プロと萬年社、日本テレビのスタッフが参加。脚本は若槻文三、今村文人、安藤豊弘、岸田森、岡本育子らが担当。音楽は冬木透、主題歌は小林亜星とボブ佐久間が作曲しました。

キャストには、誠直也、平泉征、栗原啓子、岸田森、睦五郎らが参加。ファイヤーマンの声は池水通洋が担当しました。

主題歌「ファイヤーマン」、挿入歌「出撃!SAF」「炎のようにもえろ」「はるかな青い地底に」は、日本コロムビアからレコードが発売されました。

映像ソフトとその他

LD-BOX、DVD-BOX、単品DVDなど、様々な映像ソフトが発売されています。また、小学館の学年別学習雑誌にも漫画が連載されました。

さらに、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』や『新ウルトラマン列伝』、『雑居時代』、『恐竜大戦争アイゼンボーグ』など、他の作品にも登場しています。

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