鈴木ユキオ

鈴木ユキオ（1972年5月12日、静岡県出身）は、現代日本のダンスシーンにおいて独自の存在感を放つダンサー、そして振付家です。彼は自身の表現の探求の場としてダンスカンパニー「金魚」を主宰し、その身体を通した表現と空間への深い洞察をもって、国内外に強い印象を与え続けています。

彼のキャリアは、舞踏の創始者として知られる故・土方巽の活動拠点であった伝説的な場所、アスベスト館から始まりました。1997年から1999年にかけてこの地に身を置き、そこで生み出されるほぼ全ての創作に関わった経験は、鈴木ユキオの身体への向き合い方や表現の根幹に深く刻み込まれています。アスベスト館を離れた後も、1999年頃からは舞踏の系譜を受け継ぐグループや、山海塾の創立メンバーである滑川五郎氏らの作品にダンサーとして参加するなど、先達たちとの交流を通じて表現を深めていきました。同時期にパフォーマンスグループ「サルヴァニラ」での活動も開始し、様々な表現の場を経験しました。

2000年、自己のダンス表現を本格的に追求するため、ダンスカンパニー「金魚」を設立しました。「金魚」での創作活動と並行して、国際的に活躍する振付家・ダンサー室伏鴻氏率いるKo&Edge Co.にダンサーとして参加。この活動を通じて、日本の枠を超えた舞台経験を積み、表現者としての視野を大きく広げました。

鈴木ユキオのダンスは、極限まで追い詰められ、あるいは解放される「引きちぎれるまでに翻弄される切実な身体」の探求と、緻密に構築され、観る者を惹き込む「圧倒的な空間美」が融合した独特の世界観を持っています。こうした彼の表現は、日本国内のみならず、海外のダンス関係者や観客からも高い評価と注目を集めています。

振付家としての手腕は、2008年にトヨタコレオグラフィーアワードにて「次代を担う振付家賞」という最高位の受賞によって広く認められました。この受賞は、彼が日本の現代ダンス界の将来を担う存在であることを明確に示す出来事となりました。以降、「ダンストリエンナーレトーキョー」「香港アートフェスティバル」「六本木アートナイト」といった、国内外の主要なダンスフェスティバルやアートイベントに招聘され、その代表作を披露しています。

自身のカンパニー以外での活動も多岐にわたります。近年は、白井剛氏や中村恩恵氏といった現代ダンスの第一線で活躍する振付家の作品にダンサーとして出演し、異なる視点からの刺激を受けながら、表現の幅をさらに広げています。また、ダンスという枠を超えたコラボレーションにも積極的で、ミュージシャンや映像作家、ファッションデザイナーなど、他分野のアーティストとの共同制作も数多く行っています。スピッツやEGO-WRAPPIN'などの人気バンドのミュージックビデオに出演したり、ファッションブランド「Mina perhonen」のカタログでモデルを務めたりするなど、意外な場所でその身体を目にする機会もあります。

教育活動にも力を入れており、お茶の水女子大学の非常勤講師として次世代のダンサー育成に携わったり、プロのバレエダンサーや子供たちへの振付指導を行ったりしています。

自身の表現の基礎にある身体観やメソッドを分かち合うため、鈴木ユキオは定期的にワークショップも開催しています。特に舞踏の考え方をベースにしつつ、参加者一人ひとりが自身の身体と丁寧に対話し、「自分自身のダンス」を発見していくプロセスを重視したプログラムは、多くの参加者にとって貴重な学びの場となっています。

トヨタコレオグラフィーアワードグランプリ以外にも、STスポット「ラボアワード」、セッションハウス「LBP」観客投票第一位、トヨタコレオグラフィーアワード「オーディエンス賞」など、彼のキャリアを通じて数々の受賞歴があり、その才能は早い段階から高く評価されてきました。2012年にパリ市立劇場で開催された「Danse Elargie」でファイナリスト10組に選出されたことは、国際舞台での確固たる地位を確立しつつあることを示唆しています。

これらの多岐にわたる活動を通じて、鈴木ユキオはダンサー、振付家、教育者として、現代ダンスの可能性を広げ続けています。

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