鉄十字

鉄十字とその歴史

鉄十字（Eisernes Kreuz）は、ドイツを中心に中世から使われている紋章で、特に軍事功績に対する勲章として知られています。この勲章は、ドイツ語圏では「EK」と略され、そのデザインや授与の背景に多くの歴史が息づいています。

デザインと起源

鉄十字のデザインは、黒の十字に白い縁取りが施され、十字の先端がわずかに広がっている特徴的なものです。このデザインは、ドイツ騎士団が使用していた鉄十字を基に、建築家カルル・フリードリッヒ・シンケルにより創作されたとされています。最初にこの勲章が授与されたのは1813年、ナポレオン解放戦争においてプロイセン王国が軍事功績を彰えたものです。

勲章の制定と歴史

1813年にフリードリヒ・ヴィルヘルム3世によって設立されたこの勲章は、当初、軍人や民間人に授与される戦功の象徴として位置づけられました。この章の設計裏面には王冠や柏葉のモチーフ、さらに受章者の頭文字であるFWと1813年の刻印が入っており、戦争の勝利を記念するものでした。また、後の各勲章にもこの伝統が引き継がれました。

普仏戦争を経て、1870年には「1870年章」が制定され、この際も王冠と当時の王の頭文字であるW、制定年度の刻印が施されています。さらに、第一次世界大戦時には「1914年章」が登場し、これはプロイセン国王ヴィルヘルム2世によって再度設立されました。

第二次世界大戦とナチス・ドイツ

第一次世界大戦の終結後、鉄十字勲章は1940年代にナチス政権において再び制定され、「1939年章」として知られるようになります。アドルフ・ヒトラーにより設けられたこの章は、そのデザインに鉤十字が取り入れられ、戦争の中で特に顕著な功績を挙げた人物に授与されました。

騎士鉄十字章とその等級

鉄十字勲章には、時代ごとに異なる等級があり、大鉄十字章、一級鉄十字章、二級鉄十字章が共通して制定されています。さらに、騎士鉄十字章（Ritterkreuz des Eisernen Kreuzes）も設けられ、これは授与対象者に階級の制限を設けない特異なものです。この騎士鉄十字章は、その後開発された柏葉付や剣付といった上位バージョンも存在しました。

戦争における功績の複雑な階層の中で、騎士鉄十字章は特に高い評価を受けました。戦後、この勲章の利用は制限されましたが、現在のドイツ連邦共和国においても一部は公式に認められています。ただし、鉤十字が使用された勲章は適用のない規則があり、受章者には改めて新しいデザインが授与されることで対応しています。

まとめ

このように、鉄十字勲章は長い歴史を持つ多面的な勲章制度であり、数世代にわたってドイツの軍事的名誉を象徴しています。現在でもその重要性は失われておらず、過去の伝統を踏襲しながら新たな形で伝承されているのです。

もう一度検索