銀鱗荘

銀鱗荘（ぎんりんそう）

銀鱗荘は、北海道小樽市桜に位置する料亭、温泉旅館であり、その最大の特徴は、日本で唯一宿泊可能な鰊御殿であるという点です。

概要

鰊漁で巨万の富を築いた猪俣安之丞の邸宅として建てられた鰊御殿を、料亭・温泉旅館として活用しています。この鰊御殿、すなわち本館は「旧猪俣邸」として、小樽市指定歴史的建造物に指定されており、その歴史的価値と美しい建築様式を今に伝えています。2022年には、旅館「銀鱗荘旧本館」（旧猪俣家住宅）と隣接する「グリル銀鱗荘」が、文化審議会によって登録有形文化財として文部科学大臣に答申されました。

歴史

銀鱗荘の歴史は、1900年（明治33年）に猪俣安之丞の邸宅として、余市町に建設されたことから始まります。建材には、クリ、タモ、トドマツ、ハリギリといった貴重な木材が用いられ、3年の歳月をかけて建設されるなど、贅の限りを尽くした建築として知られています。

1938年（昭和13年）には、東小樽の都市計画の一環として現在地に移築され、翌1939年、旅館として開業しました。当時の北海道庁長官であった石黒英彦によって「銀鱗荘」と命名されました。

しかし、平穏な時代は長くは続かず、1944年には大日本帝国陸軍に接収され、高射砲陣地として使用されるという歴史も持っています。

戦後、銀鱗荘は再び旅館としての歩みを始め、1989年（平成元年）には、鉄筋コンクリート構造3階建て部分を増築し、規模を拡大しました。1993年には、その美しい景観が評価され、第6回小樽市都市景観賞を受賞しています。2004年には、約4億円をかけて鉄筋コンクリート構造5階建ての新館を増築し、施設の充実を図りました。

2007年には、秋篠宮文仁親王が第52回水族館技術者研究会関係者を招いた昼食会に出席されました。2012年には、小樽市指定歴史的建造物第75号に指定され、その文化的価値が改めて認められました。

2018年8月20日、家具・インテリア販売大手のニトリが、東名観光開発株式会社から銀鱗荘の事業を継承しました。これにより、運営主体が株式会社銀鱗荘から株式会社ニトリパブリックに変更されています。ニトリにとっては、小樽芸術村の4棟に続き、小樽市内で5棟目の歴史的建造物所有となります。

近年では、将棋の対局会場としても注目を集めています。2023年7月25日・26日には、第64期王位戦七番勝負第3局、藤井聡太王位と佐々木大地七段の対局が行われ（結果は藤井王位の勝利）、同年11月10日・11日には、第36期竜王戦七番勝負第4局、藤井聡太竜王と伊藤匠七段の対局が行われました（結果は藤井竜王の勝利防衛）。

銀鱗荘は、その長い歴史の中で、鰊漁で栄えた時代の象徴として、また、戦争の記憶を伝える場所として、そして現代においては、美しい景観と質の高いサービスを提供する料亭・温泉旅館として、多くの人々に愛され続けています。小樽を訪れる際には、ぜひ一度、その歴史と風格に触れてみてください。

外部リンク

* 料亭・温泉旅館 小樽平磯温泉湯元 銀鱗荘

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