ハリギリ

ハリギリ（針桐）

ハリギリ（学名: Kalopanax septemlobus）は、ウコギ科ハリギリ属に属する落葉高木です。別名として、センノキ（栓の木）、ミヤコダラ、テングウチワ、ヤマギリなどがあります。肥沃な土地を好んで自生し、その存在は農地開墾の目安とされてきました。材木はケヤキに似た美しい年輪模様を持ち、建築材や家具材として重宝される一方で、若芽は山菜として食卓を彩ります。

形態

日本産のウコギ科植物としては珍しい高木であり、最大で樹高25メートル、胸高直径1.5メートルに達します。成木になると、大きな枝がまばらに広がり、枝先は棒状になるのが特徴です。若木の枝や幹には鋭いトゲがありますが、成長とともにそのトゲは減少します。樹皮は褐色から黒褐色で、コルク質で厚く、縦に深く裂け目が入り、この木を特徴づけています。

葉は互生し、枝先に集まってつくウコギ科特有の形態を示します。葉身は円形で掌状に5〜9つに裂け、大きなものは30センチメートルにもなります。切れ込みの深さには個体差があり、浅いものからヤツデのように深いものまで様々です。葉の縁には細かい鋸歯があり、秋には黄褐色に紅[[葉]]しますが、多くの場合、鮮やかな黄色になることは少なく、地味な色合いになりがちです。しかし、条件によっては紫褐色や緑色が混じるなど、多様な色合いを見せることもあります。

花期は7〜8月で、枝先に散状花序を形成し、淡黄色から黄緑色の小さな花を多数咲かせます。花は小さく目立たない印象ですが、多数咲き誇る様子は見ごたえがあります。果実は10月頃に熟し、直径5ミリ[[メートル]]ほどの丸い実が多数集まってつき、藍黒色に変化します。果実は冬まで残り、その後、果序の柄だけが枝に残ります。

根は深根性で、あまり分岐しません。細根の発達は良くないものの、根端は肥厚し、菌根を形成します。

冬芽は卵形から円錐形で、暗紫褐色でつやがあり、2〜3枚の芽鱗に覆われています。頂芽は大きく、側芽は比較的小さいです。葉痕はV字形で、維管束痕が多数見られます。春には太い幹からも葉が芽吹きます。

生態・分布

ハリギリは、日本、朝鮮半島、中国を原産とし、日本では全国各地、千島列島、朝鮮半島、中国に分布しています。平地から山地まで幅広い環境に自生し、特に雑木林や肥沃な土地を好みます。

人間との関係

ハリギリは、若芽が食用になるほか、根や樹皮は漢方薬としても利用されます。食用としての歴史は古く、中国の書物にも救荒食として記載されています。木材は木目が美しいため、建築材、家具材、器具、彫刻など幅広い用途で活用されています。

食用

春に芽吹く若芽は、タラノキやコシアブラなどと同様に山菜として食用とされます。採取時期は地域や標高によって異なり、一般的には4月から7月頃が目安です。採取した若芽は、はかまを取り除き、アク抜きをしてから調理します。アクが強いため、茹でて水にさらすなどの処理が必要です。調理法としては、和え物や汁物、天ぷらなどが適しています。天ぷらにすると、タラの芽に似た風味と程よいアクが楽しめます。

木材利用

ハリギリの木材は「センノキ」と呼ばれ、木肌や色によって「オニセン」「ヌカセン」「アカセン」と区別されます。中でもヌカセンは、軽くて加工しやすいことから、建築材、家具材、楽器、仏壇、下駄など、幅広い用途に使われています。木目は美しく、海外でも人気があります。また、ケヤキに似た木目を持つことから、ケヤキの代用品としても用いられることがあります。

北海道では大きな木が多く、明治時代には下駄材として本州に出荷されました。現在でも、国内産の栓の大部分は北海道産です。アイヌ文化においても、丸木舟の主要な材として利用されてきました。

アイヌの口頭伝承

北海道沙流川流域のアイヌの間には、ハリギリの丸木舟に関する禁忌を語る伝承があります。かつては、ハリギリの舟を禁忌とする物語は存在せず、道具はきちんと使いなさいという教訓が元にあったと考えられていますが、ハリギリの鋭い刺による怪我から、タブー視されるようになったと推測されています。しかし、現在では再びハリギリを用いた丸木舟の復元も行われています。

名称

和名「ハリギリ」は、若い枝にある鋭いトゲと、葉がキリに似ていることに由来します。別名の「センノキ」は、木材としての呼び名です。また、芽がタラノキに似ていることから、アクダラ、オオダラといった別名もあります。大きな葉が天狗の羽団扇に例えられ、テングノハウチワとも呼ばれることもあります。アイヌ語では「アユㇱニ」と呼ばれます。

脚注

注釈

出典

参考文献
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関連項目

ハウチワカエデ
* ケヤキ…木目が類似。

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