鎧駅

鎧駅：日本海を望む歴史ある駅

兵庫県美方郡香美町香住区鎧にあるJR西日本山陰本線の鎧駅は、1912年（明治45年）3月1日、山陰本線の香住駅～浜坂駅間の延伸と同時に開業しました。開業当初は旅客と貨物の取扱いを開始し、地域の経済活動を支える重要な拠点として機能していました。

1970年（昭和45年）12月15日には小口扱い貨物と荷物の取扱いが廃止され、無人駅となりました。その後、1980年（昭和55年）には駅舎の改築が行われ、駅周辺環境の整備が進められました。国鉄分割民営化後の1987年（昭和62年）4月1日からは、JR西日本の駅として運営されています。

2010年（平成22年）には、余部橋梁の工事のため、列車が運休となり、営業を一時休止しました。また、2012年（平成24年）のダイヤ改正では、一部普通列車が通過するようになり、その後、2013年には当該列車は快速列車となりました。しかし、2021年（令和3年）のダイヤ改正で快速設定は消滅し、すべての普通列車が停車するようになりました。さらに、2022年（令和4年）10月1日には組織改正に伴い、近畿統括本部福知山管理部の管轄となりました。

駅の構造は、浜坂方面に向かって左側に単式ホーム1面1線を有する地上駅です。現在では豊岡駅の管理下にある無人駅となっています。かつては相対式ホーム2面2線を有し、列車の交換設備を備えていましたが、2008年のダイヤ改正で1番線への列車停車が廃止され、両方向の列車が2番線を使用するようになりました。その後、2012年秋頃には棒線駅化工事が実施され、分岐器や1番線のレールが撤去されました。それでも、1番線ホームからは日本海を望むことができ、観光客への配慮からホームへの出入りは現在も可能です。

近年の1日平均乗車人員は減少傾向にありますが、依然として地域住民の利用や観光客の利用があります。

駅周辺は、美しい香住海岸や兵庫県道166号鎧停車場線、十二社神社、松ヶ崎百層崖など、見どころが多く存在します。香美町町民バスも利用可能です。

鎧駅は、文学作品や映像作品にも登場しています。宮本輝の小説『海岸列車』では、当駅が舞台となったシーンが重要な主題となっています。また、NHK連続テレビ小説『ふたりっ子』（1996～1997年放送）や、TBS系列ドラマ『砂の器』（2004年放送）のロケ地としても使用されました。

歴史的な側面としては、かつて鎧漁港で水揚げされた海鮮物を貨物列車で運搬するために、港と駅を結ぶインクライン（傾斜鉄道）が存在しており、現在もその遺構の一部を見ることができます。2001年冬の「青春18きっぷ」のポスターにも使用され、知名度向上に貢献しました。

現在も、歴史を感じさせる駅舎と美しい景観を持つ鎧駅は、山陰本線沿線観光の拠点として、そして地域の生活を支える駅として、役割を果たしています。隣の駅は、豊岡方面に香住駅、浜坂方面に餘部駅です。

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