長井雅楽

長井雅楽（ながい うた）の生涯と影響

長井雅楽（1819年6月22日 - 1863年3月24日）は、日本の江戸時代末期に長州藩の直目付として知られる重要な藩士でした。彼は、一般的には雅楽という通称で呼ばれていますが、本名は時庸（ときつね）です。長井家は主家である毛利家の庶流にあたり、名門として知られています。

家族と早年期

雅楽は萩藩士である長井次郎右衛門泰憲の長男として誕生しました。実は、小さい頃に父を亡くし、4歳で家督を継ぎながら、幼少であるがために家禄を半減されるという厳しい運命を背負います。彼はその後、藩校である明倫館で学び、藩主・毛利敬親の小姓を務めました。雅楽は敬親から厚く信任され、やがて毛利定広の後見人にもなったのです。

政治姿勢と攘夷派との対立

安政5年（1858年）には長州藩の重職である直目付に就任し、開国を支持する立場を清明にすることで政治的課題に取り組みました。文久元年（1861年）には公武一和に基づく『航海遠略策』を藩主に建白し、それが長州藩の公式な方針となる。彼は朝廷と幕府の公武合体派とも良好な関係を築きましたが、藩内には尊皇攘夷を強く主張する吉田松陰の派閥との対立がありました。

長井は松陰の弟子たちからの反発を受け、松陰が安政の大獄で捕縛される際には強硬な対応を避けたため、彼の評価が分かれました。それにもかかわらず、彼の政治的アプローチは当時の情勢を考慮した自然なものであったと見ることができます。特に松陰が江戸に護送された際には、長井がその処遇について気を配っていたことも注目されます。

戦局の変化と切腹

文久2年（1862年）、幕府内での公武合体が進行していましたが、政治的な変化に伴い長井の立場は危機的な状況に陥ります。坂下門外の変で安藤や久世が失脚すると、藩内の攘夷派が勢力を盛り返し、彼に対する排斥運動が激化しました。長井は再度江戸に赴きましたが、対立する意見が強まり、藩主から謹慎を命じられ、さらには解任されて帰国を余儀なくされます。

1863年、最終的に雅楽は長州藩の責任をとる形で切腹を命じられました。雅楽自身はこの措置を受け入れがたかったものの、藩内の論争を避けるために自らの命を絶つことを決意します。彼は萩城下の自宅で切腹し、享年45年という若さでその生涯を閉じました。

辞世の句と評価

切腹の前日、彼は友人である高杉小忠太に向けて、自己の潔白と遺児の庇護を訴える手紙を送ります。最後には「ぬれ衣のかかるうき身は数ならで唯思はるる国の行く末」との辞世の歌を残しました。

彼は多くの有名な政治家からも高く評価されました。岩倉具視は「長井より偉い者はない」と称え、伊藤博文は長井の豪傑ぶりを認めていました。長井雅楽はその生涯を通じ、日本の歴史の波の中で重要な役割を果たした人物であったことがわかります。

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